【阪神スプリングJ】マイケル、打倒オジュウ!高市師に贈る幻の300勝 障害2大巨頭注目初対決

2020年3月10日 05:30

オジュウチョウサンを倒し、高市誌弔い星を狙う鞍上の金子とシングンマイケル

 今週末は平地&障害で5重賞が組まれる豪華版。それぞれが春のG1を占う重要な一戦だが、中でも注目はJ・G2阪神スプリングジャンプ(14日、阪神)。暮れの中山大障害を制し19年最優秀障害馬に選出されたシングンマイケルと、障害重賞11連勝中の絶対王者オジュウチョウサンが初の直接対決を迎える。マイケルを育てた高市圭二師は先月17日に病気で死去(享年64)。弔いVも懸かる特別な一戦だ。

 昨年、重賞3連勝を飾り、障害馬にとっての最高の栄誉である中山大障害を制したシングンマイケル。主戦の金子光希(38)は、デビュー20年目で初のG1制覇。「この馬で勝てなければ、一生勝てないと思っていた。やっと夢がかないました」。苦労人は人目もはばからず涙を流した。最高の、最愛の相棒を、金子はこう評する。「障害に向かって行く気迫、そしてそれに耐え得るフィジカルを両方備えている。跳びが鋭く踏み切りが速い。着地して一歩目のリカバリーも速い。一つ一つはわずかな差でも、飛越を重ねていけば相当な差になる。本当に理想的な障害馬です」

 マイケルが快進撃を続けていた昨年後半。二刀流の王者オジュウチョウサンは平地競走に専念していた。今回が初対決。何度も対戦経験のある金子は「オジュウは規格外。本当に強いです」。最強のライバルを最大限に称えた上で力を込める。「だからこそ“オジュウがいなかったから勝てた”。そう言われるのが嫌なんです。オジュウが現役のうちに挑戦できるのは楽しみ。相手は歴史に残る名馬。強気にはなれないが、こちらには勢いと若さがある。付け入る隙がどこかにあると信じて挑みます」

 高市師の死去により管理馬を暫定的に引き取った大江原哲師(67)は、高市師とは40年来の親友。3歳上の大江原師が「圭二」、高市師が「アニキ」と呼ぶ間柄だった。「圭二が騎手デビューした頃からの付き合い。今も風呂なんかで一人になると思い出して涙が出る。俺にとっては弟同然なんだ」。自身の管理馬として臨む特別な一戦。「あんまり言うと乗り役のプレッシャーになるから」。大江原師は鞍上を気遣った上で胸の内を吐露した。「それでも勝ちたい。勝たなきゃ。そういう気持ちはある。圭二のためにもね」

 金子も思いは同じだ。「ずっと乗せてもらって…。恩義しかない。今も高市先生が決めたルーティンを守って調整している」。高市師はJRA通算299勝。大台を目前にして天国へと旅立った。「何とかいい報告をしたい。まだ前哨戦だけど負けたくない。少し格好つけた言い方ですが、幻の300勝を先生にささげたい」。真の王座を決するG1中山グランドジャンプに向け、まずは機先を制したい。思いを背負った勝負の行方を、高市師も天国から見守っている。

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2020年3月10日のニュース