【マイルCS】サリオス100点!3歳秋にマイル仕様、接近戦にも耐えられる安定感と重量感

2020年11月17日 05:30

安定感と重量感を感じさせるサリオス

 ブラウンゴールドの輝きで古馬一蹴だ。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第37回マイルCS(22日、阪神)では3歳馬サリオスに唯一満点を付けた。達眼が捉えたのは将棋の駒「金将」のように攻守のバランスが整った重量感あるボディー。金将は成り駒になれないが、競走馬の金将はマイラー体形に進化しながら深い金色の光沢を放っている。

 17日は将棋の日。江戸時代、将棋好きで知られた徳川吉宗が毎年11月17日(旧暦)を「お城将棋の日」に定め、江戸城で御前対局を制度化したことに由来します。ダービーの馬体診断で「金将」になぞらえたサリオス。分厚い筋肉の鎧(よろい)をまとった武将のような姿は半年たっても変わりません。

 太い首、せり上がった肩、トモの筋肉もハーツクライ産駒らしからぬボリュームです。立派な上半身を支える飛節や膝などの下半身も頑丈。終盤の接近戦にも耐えられる金将の安定感と重量感があります。しかも、体重540キロ前後の大型馬なのに巨体には映らない。前後肢、上下半身のバランスが整っているからです。王の最側近を務める守りの要であり、持ち駒としては寄せや詰めの要でもある、攻守に均衡が取れた金将のように…。

 金は成り駒に変身できませんが、競走馬の金将はマイラーの体に進化した。ダービー時には肋(あばら)が浮くほど細かった腹周りが駒を裏返したように大きくなりました。マイラーらしい立派な腹袋。2歳暮れの段階から完成度の高い馬体でしたが、3歳秋を迎えて中距離仕様からマイル仕様の体形に変わったのです。

 栗毛の被毛は晩秋の優しい日差しを浴びて金色に輝いています。毛ヅヤも今春とは微妙に色合いを変えました。同じ金色でもダービー時が淡いシャンパンゴールドなら、今回は深みのあるブラウンゴールドの輝き。充実した馬体の内面からにじみ出てくる光沢です。

 立ち馬の写真を見ると、砂の地面には蹄跡が一つもありません。脚をバタバタさせずに写真に納まったからです。ハミを穏やかに受けて、尾も自然に垂らしている。金将にふさわしい貫禄ある立ち姿。その脚元のきれいな砂地が落ち着いた心境をなによりも雄弁に語っています。

 「金なし将棋に受け手なし、金なし将棋に攻め手なし」。金将は攻守の要だという意味の格言で将棋の日の馬体診断を締めくくりたい。マイル戦線の要、サリオスにも当てはまる格言です。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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