【菊花賞】アスクビクターモア 折り合って本番!Wコース単走ラスト11秒7
2022年10月20日 05:30 調教の動きだけをクローズアップして勝ち馬に迫る秋の追い切り企画「厳選超抜リスト」。牡馬クラシックの最終冠「第83回菊花賞」で特別取材班がイチ推しするのはアスクビクターモアだ。燃えやすい気性を考慮し、単走追いで鍛錬を重ねてきた。最終リハも単走で軽快な動きを披露。廣崎利洋HDが大一番で狙う“アスク丼”のけん引役。ダービー最先着(3着)の看板を携え、ラスト1冠に挑む。
信念は曲げない。アスクビクターモアの最終追いはルーティンであるWコース単走。外ラチいっぱいを回り、馬なりのまま5F67秒0~1F11秒7。しなやかに力強く駆け抜けた。「折り合い重視でコントロールしながらラップを刻み、最後の1Fで(手綱を)離せとの指示通り。ゴールを過ぎてからもブレーキをかけずに流した。凄い時計ではないが躍動感がある。馬も“そろそろ競馬だな”と感じている」。愛馬の動きを満足そうに振り返った田村師。先週は5F66秒2~1F11秒9。全体時計はセーブしたが、その分しまいは伸ばした。「先々週、先週と3本追った中で一番いい動きに見えた」と青写真通りの上昇ぶりだ。
春までは前向き過ぎる気性が課題だった。レースで制御に苦しんだこともある。田村師も以前「時計は出そうと思えば、いくらでも出せる」と語ったことがある。稽古で燃えすぎないよう、必要以上の負荷をかけないよう、単走追いにこだわって稽古を積んだ。皐月賞の最終追いが5F65秒3~1F11秒2。ダービーが同65秒5~11秒3。タイムだけを比較すれば、春2冠よりも控えめ。しかし見た目の動きは今の方が滑らかだ。その差は馬が折り合いを覚えた証。3000メートルを走り切る菊花賞で最も重要な要素でもある。
「レースで掛かっていた頃から中長距離向きと信じていた。父のディープインパクトのように脚をためてズドンのタイプではない。千六や千八に行けば楽かなとも思ったが、それでは長所をつぶしてしまう。自分の勘を信じ、短いところには行かないと決めた。とにかく折り合い重視で、馬に“この距離で我慢するんだ”と教えてきた。思っていた通りに成長してくれた」。田村師はデビューからの1年半を熱を込めて振り返った。愛馬への信頼と調教師としての矜持(きょうじ)を胸に…。結実のラスト1冠に臨む。