安田隆師 騎手でのトウカイテイオー2冠!調教師でロードカナロアの香港連覇
2024年2月21日 05:30 今年は東西トレセンで7人の調教師が70歳定年制により来月5日をもって引退する。「さらば伯楽」第3回は栗東の安田隆行師(70)だ。91年日本ダービーでトウカイテイオーを勝利に導いた名手であり、カレンチャンやロードカナロアなどで短距離王国を築いた名トレーナー。50年以上の競馬人生を振り返った。
競馬人生、半世紀余り。安田隆師のラストイヤーは象徴的な幕開けだった。先月13日、小倉の愛知杯を愛弟子・川田騎乗のミッキーゴージャスで快勝。「師匠と獲れる恐らく最後の重賞」(川田)にトップジョッキーも感無量の面持ちだった。
さらに翌14日の京成杯を次男・安田翔師の管理馬ダノンデサイルが快勝。後継者の前途洋々な未来を思わせた。馬を育て、人を育てる。安田隆行という大樹は根を張り、大きく枝葉を広げ、競馬の世界に足跡を残した。
競馬とは無縁の家庭に育ったが、父に連れられて行った京都競馬場で競馬の魅力に触れる。馬を自在に動かす「騎手の格好良さに憧れた」(安田隆師)と振り返る。
中学を卒業し、見習終了後の72年、梶与三男厩舎から騎手デビュー。ルーキーイヤーはベテラン相手に12勝を挙げ、関西新人賞に輝く。が、好事魔多し。2年目も順調に勝利を重ねたが3月に阪神で落馬負傷。脳挫傷で意識不明の重体となり、半年の休養を強いられた。
騎手としてはJRA680勝。オールドファンには「小倉の安田」が耳になじむ。小倉開催45週連続勝利の記録を作ったが、やはり忘れられない勝利はトウカイテイオーと勝った91年皐月賞、日本ダービー。デビュー20年目にして手にしたG1が調教師としてのモチベーションになった。
95年の厩舎開業後、数々の名馬を手がけ、忘れられない馬にロードカナロアの名を挙げる。国内外でG16勝。特に印象に残っているのが引退レースで連覇を飾った13年香港スプリントだ。
「鳥肌が立ちました。5馬身ぶっちぎって本当に凄いなと」。勝利インタビューで語った「いずれロードカナロアの子で香港スプリントを」という父子制覇の夢は20年にダノンスマッシュで実現させている。
「オーナー、スタッフに恵まれ、素晴らしい調教師人生を送れました」
まだ、かなえなければならない夢がある。JRAに地方、海外を合わせた通算1000勝へ、あと「4」に迫る。現在JRA965勝に地方28勝、海外3勝で計996勝。残り2週、壮大な夢の締めくくりに全力を注ぎ込む。
◇安田 隆行(やすだ・たかゆき)1953年(昭28)3月5日生まれ、京都市出身の70歳。72年、栗東・梶与三男厩舎所属で騎手デビュー、関西新人賞受賞、91年トウカイテイオーで日本ダービー制覇。JRA通算6401戦680勝。94年に調教師免許取得、翌年に厩舎開業。JRA通算8315戦965勝、うちG1・14勝を含む重賞59勝。
《サウジで日本でW重賞制覇狙う》安田隆師は今週土曜サウジアラビアの1351ターフスプリントにアグリ、日曜の阪急杯にサンライズロナウドと5歳牡馬2頭を起用。同一週の日沙重賞Vなるか。アグリは阪神C3着、シルクロードS2着と濃い内容の競馬を続けている。昨春の香港遠征(チェアマンズスプリントプライズ5着)を経て、ひと皮むけた印象だ。サンライズロナウドは昇級の前走・シルクロードSで4着に食い込む力走を見せた。安田隆師は「距離が1F延びるのはいいと思う。ただ、時計がない分どうか。気難しさもあり、思ったように追い切れないので」と仕上げの難しさに言及しながらも前々走の新春Sで見せた末脚に期待を寄せている。