今でも語り草…20年グランアレグリアの大外ゴボウ抜き

2025年9月26日 05:05

20年スプリンターズS、後方から一気に差し切ってグランアレグリア(撮影・西川祐介)

 【競馬人生劇場・平松さとし】
 今週末、中山競馬場でスプリンターズS(G1)が行われる。

 今から5年前の2020年、この短距離G1を制したのは、当時4歳の牝馬グランアレグリアだった。管理していたのは伯楽・藤沢和雄調教師(引退)、手綱を取ったのはC・ルメール騎手だった。

 その走りぶりは今でも語り草になっている。序盤からずっと後方に構え、直線を向いても16頭立ての15番手。先頭とは12馬身前後もの差があった。1600メートルを主戦場としてきた彼女にとって、1200メートル戦は高松宮記念(G1、2着)以来2度目。序盤はスピードに乗れず、後方で苦しい競馬を強いられていたというわけで、ルメール騎手は当時の心境を後にこう振り返っている。

 「3コーナーで正直、今日はもう厳しいと思いました。だから次につながる競馬をしようと考えを切り替えたんです」

 だから、たとえ届かなくても最後はしっかり伸ばそうという手綱さばきをしたところ、火がついた彼女の末脚は想像を超えていた。大外から一気に他馬を抜き去り、ゴールでは2着馬に2馬身差をつけて悠々の勝利。安田記念(G1)でアーモンドアイを差し切った実力を、ここでも改めて証明した。

 しかも、この時のグランアレグリアは、安田記念以来の休み明け。馬体重はプラス12キロの504キロで、デビュー以来9戦目にして最も重かった。新馬戦と比べると実に46キロの増加である。

 思い返せば藤沢調教師は「若い牝馬はカイバを食べない時期がある。そこで無理をさせないことが大切」とよく語っていた。実際、グランアレグリアも朝日杯フューチュリティS(G1)で3着に敗れると、桜花賞(G1)まで使わずに桜の女王となってみせた。さらにNHKマイルC(G1)で5着に降着となった後も年末の阪神C(G2)まで休ませて、これを快勝した。伯楽の先見の明が、彼女の才を大輪の花へと開かせたのだ。 (フリーライター)

特集

2025年9月26日のニュース