菜七子 栄冠の裏に愛される人間性

2019年7月5日 05:30

総合優勝を果たし、笑顔の藤田菜七子騎手

 【競馬人生劇場・平松さとし】スポニチ本紙でも既報の通り、スウェーデンで行われたウィメンジョッキーズワールドカップで藤田菜七子騎手が優勝した。

 私は現地に赴き、彼女の海外初勝利や総合優勝を決めた歴史的なシーンに立ち会わせていただいた。英国のG1ジョッキーでワールドオールスタージョッキーズにも参戦経験のあるヘイリー・ターナー騎手こそキャンセルで参加できなくなってしまったが、ブラジルでリーディングジョッキーとなったジーン・アルヴェス騎手ら実績のあるライバルを相手に見事、唯一2勝を挙げて堂々の優勝。冷静な手綱さばきに感心させられた。

 優勝後のインタビューで彼女は「日本でたくさん乗せていただけている経験が生きました」と語った。その通りではあるが、それだけたくさん乗せてもらえるのは減量の恩恵や技術面だけではないと思える場面が、まさにリアルタイムで起きていた。当方のLINEやメールに日本の先輩騎手や調教師から「菜七子の速報を教えて」「菜七子は勝った?」という連絡がいくつも入っていたのだ。

 さらに優勝したことをSNSにアップすると、リサ・オールプレス騎手やケイトリン・マリヨン騎手、オイシン・マーフィー騎手やフィリップ・ミナリク騎手ら彼女を知る外国人騎手から続々とお祝いの言葉が届いた。皆に慕われる彼女の人間性を感じさせたものだ。

 そんなナナコ・フジタ騎手と帰国する飛行機の搭乗口に並んでいる時、彼女から逆質問をされた。

 「あちこちの国に行かれていますけど、どこの国が一番オススメですか?」

 何ということのない質問に目を輝かせる表情はいかにも21歳の女の子。競馬場で見せる格好良さとのギャップを感じさせた。そして、同時に彼女が皆から慕われている理由がなんとなく分かった気がした。(フリーライター)

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