【朝日杯FS】サリオス100点 四肢力みなく余裕ある精神状態 立ち姿は「悠」

2019年12月10日 05:30

一流馬にふさわしい傑出した馬体と悠然たるたたずまいを持つサリオス(撮影・西川 祐介)

 2歳王者のキーワードは「傑」と「悠」。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。第71回朝日杯FS(15日、阪神)ではデビュー2連勝中のサリオスに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのは一流馬にふさわしい傑出した馬体と悠然たるたたずまい。1年間の世相を1文字で表す「今年の漢字」が12日、京都・清水寺で発表されるが、それに先立って有力馬のボディーを漢字1字で表しながら解説する。

 新元号になった今年の世相を漢字1字で示すなら「新」か、それとも「令」か。元号改元に消費税の改定も加わったので「改」かもしれません。首里城焼失や千葉県などの台風被害から「災」を2年連続で挙げる向きもあります。朝日杯FSで人気を集めるサリオスの特徴を1字で示すなら…。視点の置き方次第でいくつもの文字が浮かんできます。

 立ち方を見れば「悠」。ゆったりハミを取りながら、悠然と四肢を大地につけています。涼しい目、自然に垂らした尾、集中しながら過敏になり過ぎることもない耳の立て方。四肢にも全く力みがない。穏やかな気性、余裕のある精神状態をうかがわせる立ち姿です。朝日杯のマイルではなく、ホープフルSの2000メートルに向かった方がいいのではないか。そう思わせるほど「悠」がにじみ出たたたずまいです。

 体つきを見れば「傑」。筋肉量が凄い。トモや肩が鎧(よろい)をまとったように盛り上がっています。腹袋も立派。分厚い上半身を支える下半身も丈夫です。飛節が大きく、膝のつくりも頑丈。四肢の腱がしっかり浮いているので脚元に不安もありません。加減せずに調教を積めるでしょう。540キロ前後の大型馬なのに全ての部位が優れているため目立った部分がない。この見事な均衡も「傑」をイメージさせます。毛ヅヤも良好。体調は申し分ありません。

 血統を見れば「新」。ハーツクライの2歳産駒といえば、多くはトモが頼りなく映ります。加齢とともにトモに力をつけていく晩成型血統です。ところが、サリオスのトモは2歳暮れの時点で非常に発達している。母系のドイツ血統の影響か。ともあれ、ハーツの新しいタイプの産駒です。

 キ甲(首と背の間のふくらみ)はまだ抜けていません。成長途上の段階でこれほどの体になるとは、ちょっと驚かされます。「驚」も加えておきたい。キ甲が抜ければ、どんな姿に変わるのか。来年の12月にはアーモンドアイのように「超」が付く一流馬になっているかもしれません。クラシックを意識させる大物。前途洋々たる未来が待っています。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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