史上2人目の1500勝達成 藤沢和師は常に“馬の状態ファースト”

2020年6月19日 05:30

13日に通算1500勝を達成した藤沢和師

 【競馬人生劇場・平松さとし】藤沢和雄調教師がまた一つ偉大な記録に到達した。先週13日の函館競馬、第10レースをシークレットアイズで優勝。史上2人目となるJRA通算1500勝を達成した。

 彼が素晴らしいのは数字の多さだけでなく大舞台でも実績を残しているというところ。1998年にはフランスのG1・ジャックルマロワ賞をタイキシャトルで優勝、2002~04年まではシンボリクリスエスとゼンノロブロイで有馬記念を3連覇、17年にはレイデオロで日本ダービーも制した。また、今月7日に行われた安田記念(G1)もグランアレグリアで優勝。再来年には定年で引退をしなくてはならない68歳だが、いまだに健在というところを披露した。

 グランアレグリアといえば昨年の桜花賞馬でもあるが、藤沢和師と桜花賞というとある一頭の名牝が思い出される。1998年に阪神3歳牝馬S(現阪神ジュベナイルF・G1)を優勝したスティンガーだ。同馬は翌99年、前哨戦を使わずぶっつけで桜花賞に挑戦。結果12着に敗れると「なぜひと叩きしなかった!?」と批判された。当時、決して休み明けが敗因だったわけではないと思った私が藤沢和師に「次回、似たような機会があったらまたぶっつけで使って今度は勝っちゃいましょう!!」と声を掛けた。すると、伯楽はニコリともせずに答えた。

 「スティンガーはデビューから1カ月と満たないうちに3戦使ってG1を優勝した。だから先々を考えて春は無理をさせたくなかっただけ。何も意地になることではないので、馬の状態によって考えるだけだよ」

 その後、名調教師は04年にダンスインザムード、そして先述した通り昨年はグランアレグリアをそれぞれ桜の女王へと導いた。ダンスインザムードはフラワーC(G3)を使ってからの戴冠だったが、グランアレグリアは前年の2歳戦以来のぶっつけ。スティンガーで批判されてから20年の時を経て、雪辱を果たしたとも言えるが、おそらく偉大な調教師は言うだろう。「何も意地になることではないので、馬の状態によって考えただけですよ」と。(フリーライター)

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