武豊と世界に羽ばたいたシーキングザパール
2022年1月7日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末に行われるシンザン記念(G3)。
この重賞を7勝もしているのが武豊騎手だ。2002年に後のダービー馬タニノギムレットで勝利すると、05年のペールギュントまで実に4年連続制覇。“さすが!!”の手綱さばきを披露した。
そんなトップジョッキーが初めてこのレースを制したのは1997年。タッグを組んだのはシーキングザパールだった。
同馬は1200メートルの新馬戦で2着を7馬身も突き放して逃げ切り勝ち。2戦目にはスタート直後にUターンしようとして3着に敗れたが、ここまで悪癖を出したのはこの時だけ。以降は天才騎手にいざなわれ重賞を勝ちまくった。翌97年に先述した通りシンザン記念を勝つと、それを含め重賞4連勝。4連勝目はG1のNHKマイルCだった。
ところが翌98年、古馬となったシーキングザパールはシルクロードS(G3)こそ勝ったものの高松宮記念(G1)で4着に敗れると安田記念(G1)で10着。勢いは止まったかと思えた。
そんなシーキングザパールは海の向こうで輝きを取り戻す。惨敗した安田記念の直後、果敢に欧州遠征。英国のニューマーケットで仕上げた後、フランスへ渡りドーヴィル競馬場で行われたモーリスドギース賞(G1)に挑戦すると、これを楽勝してみせたのだ。
これが日本調教馬による海外G1初制覇だったわけだが、当時、現地で取材をしていた私は日本のNo・1ジョッキーに驚かされたのをよく覚えている。
「状態はとても良いので、多分勝てると思います」
レース前、武豊騎手はそう語っていた。今でこそ日本馬が世界中で活躍をしているが、先述したように当時は海外のG1を勝利した馬は皆無。ジャパンCでも外国馬とのレベルの差を痛感させられていた時代。しかし、その頃から海外での騎乗経験も豊富だったのが武豊騎手。彼だからこそ先入観にとらわれず冷静なジャッジができたのだ。
さて、今年のシンザン記念ではどんな将来につながるドラマが待っているだろう。好レースを期待したい。 (フリーライター)