【エリザベス女王杯】ブレイディヴェーグ95点 厚底シューズの前肢 女王ロード駆け抜ける

2023年11月7日 05:30

ブレイディヴェーグ

 最少キャリアの女王を生むのは厚底シューズのような前肢だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第48回エリザベス女王杯(12日、京都)ではキャリア4戦のブレイディヴェーグをハーパーとともに1位指名した。達眼が捉えたのは着地の衝撃を吸収するクッション性の高い前肢。厚底シューズで女王ロードの頂点に駆け上がる勢いだ。

 衝撃を吸収する厚底シューズが陸上界を席巻しています。世界のマラソンシーンを一変させたナイキの厚底シューズ。男子マラソンのエリウド・キプチョゲ(ケニア)が非公式ながら人類史上初めて2時間の壁を破ったのもこのシューズです。厚底シューズはクッション性が高いため着地の衝撃から足を守れる。開発が進んで薄底に劣らない安定性と軽量化も実現しました。

 この厚底シューズのようなクッション性の高い前肢を備えているのがブレイディヴェーグです。着地時の蹄底に与える強い衝撃を滑らかな角度のつなぎと球節、膝で和らげ、太い前腕と上腕で食い止めています。特に前腕は着地の反動を抑える大切な部位。前腕が弱ければ着地も安定しないため、力をセーブした走りになってしまう。だが、これほどたくましい前腕なら硬い馬場の強い衝撃もしっかり受け止められます。乗っていても安定感があるでしょう。オランダ語で「広い道」と名付けられた3歳馬の非凡さは厚底シューズのような前肢にあります。

 父ロードカナロア、母の父ディープインパクトの血統を体現した馬っぷり。あか抜けた馬体に弾力性に富んだ柔らかい筋肉を付けています。距離が延びても問題ないでしょう。460キロ前後の体重の割にはトモも立派。強い推進力を生み出す後肢と着地の衝撃を受けとめられる前肢。前後肢の機能性もこの馬の長所です。

 キャリア4戦でも立ち姿に気負いはありません。穏やかにハミを受け、顔に集中力を示しながら静かにたたずんでいます。栗東滞在の関東馬。勝手の分からない場所でこれだけ落ち着いていれば何の心配もいらない。

 キ甲(首と背中の間の膨らみ)は未発達。首差しもまだ抜けきっていません。馬体が完成するのは古馬になってからでしょう。それでも、クッション性と機能性に富んだ馬体はG1級です。衝撃を吸収する厚底シューズの前肢がターフ界を席巻するかもしれません。(NHK解説者)

◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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