【ジャパンC】イクイノックス 負けず嫌いの世界一イケメン!園遊会でも語られるほど天皇陛下の心動かした
2023年11月22日 05:30 驚異の日本レコードを刻んだ天覧競馬の感動がよみがえる。「第43回ジャパンC」(26日、東京)にイクイノックスが最多タイ記録となるG1・6連勝を懸けて出走する。前線記者が推したい馬の魅力をアピールするG1ウイークの水曜企画「馬(バ)チェラー」。今週はベテラン梅崎晴光(61)が、女性ファンの一途(いちず)な愛馬心の軌跡をたどりながら、天皇陛下の称賛も受けた最強ホースの蹄跡に迫る。
“アイヌの父”と呼ばれるジョン・バチェラー宣教師が札幌にアイヌ民族の教育機関「バチェラー学園」を設立した1922年。同地から110キロ離れた新冠御料牧場に当時の皇太子殿下(後の昭和天皇)が行啓された。放牧の様子を視察された後にアイヌ競馬を手を打って観戦。「この日が一番愉快であった」(天皇賞の世紀=05年競馬ブック所収)と感激されたという。
それから1世紀を経た今秋の天覧競馬。東京競馬場で天皇賞を観戦された天皇陛下はイクイノックスのウイニングランに立ち上がって拍手を送り、「凄いレースでしたね」と感動されたという。レース後には優勝馬関係者との対面を希望され、ファンイベントを終えたルメールが陛下の元へ駆けつけた。
今月2日に赤坂御苑で開かれた「秋の園遊会」でも、招待者の岡部幸雄元騎手らに、陛下は天皇賞の感動を自ら語られたという。1分55秒2という驚異的なレコードでの秋の盾連覇はそれほど衝撃的だった。
「ドバイで勝ってスターになったけど、これで世界のスーパースターになりました」。天皇賞・秋のレース後、場内スピーカーから流れてくるルメールの言葉を聞きながら、イクイノックスに一途の愛を貫く女性ファンも目を潤ませていた。
同馬の一口会員でもあるジャズトランペッターの市原ひかり。恋するバチェラーが出走する日は自身のライブスケジュールを空けて観戦。パドックからレース終了まで望遠レンズを向け続ける。「あの子が変わったのはダービーの惜敗から。馬場から引き揚げる際にドウデュースのウイニングランを悔しそうに見つめているんです。ルメールさんと一緒に、じっと立ち止まって」。
惜敗を糧にダービー以後はG1・5連勝。「馬にはレースを勝つ動機がないっていうけど、彼はまれにみる勝ちたがり。もう負けないぞと自分で決めているみたい」。天皇賞で味わった感激のお礼に直筆のイクイノックスのイラストを木村厩舎へ贈ったという。
3月のドバイ遠征時は前年の有馬記念の疲労が抜けず食欲不振に陥った。「宝塚記念も疲れが残っていたのか、ゴール後にすぐ止まってしまいました。それでも勝つなんてけなげで可愛くて」。天皇賞の口取りでは不機嫌そうに尻っぱねをした。「昨秋の天皇賞ではおとなしかったのに…」。疲れてご機嫌ななめの彼が心配になったが、すぐ思い直した。つらい時が成長する時だよ。天皇陛下も感動されたいとしのバチェラー。再び衝撃の走りを見せる。
◇市原 ひかり 1982年(昭57)生まれ、東京都出身。05年、洗足音楽大ジャズコースを首席で卒業。同年、ポニーキャニオンからデビューアルバム「一番の幸せ」をリリース。ジャズだけでなく竹内まりや、山下達郎らのアルバムにもソロプレーヤーとして参加。父はジャズドラマーの市原康氏。シルクホースクラブでイクイノックスの他にアロマデローサ(牝3)、メテオリート(同)、カンティアーモ(牝2)の愛馬会員になっている。