【追憶のホープフルS】ラジオたんぱ杯時代の00年アグネスタキオン 格高めた、のちのG1馬3強対決

2023年12月27日 06:45

2着クロフネ(左から二頭目)以下後続を大きく引き離してアグネスタキオン(左)が圧勝(第17回ラジオたんぱ杯3歳S)

 競馬(に限らずレース全般)において最も面白い、興味深いのは“3強対決”ではないか。

 レース中の駆け引きという点で考えたい。“1強”では、ある1頭をライバル全頭が倒しにかかるという、一方的な方向の駆け引きしかない。“2強”では、その2頭による駆け引きのみだ。

 これが“3強”になると、急に駆け引きの種類が増える。まずはA対B、A対C、B対Cの3通り。勝ち馬AがCを退けた後、Bをさらに倒すパターンもあるだろう。レース中の勝負どころが一気に増える。

 前置きが長くなったが、オールドファンに“思い出の3強決戦”を聞けば必ず出てくるのが、この00年ラジオたんぱ杯3歳Sだ。

 まずはアグネスタキオン。同年のダービー馬アグネスフライトの全弟だ。デビュー戦を3馬身半差つけて圧勝していた。

 そしてジャングルポケット。札幌チャンプで、その札幌3歳Sでは、のちに東スポ杯3歳Sを制し、朝日杯3歳S2着のタガノテイオー、同じくのちに阪神3歳牝馬Sを制したテイエムオーシャンを下していた。

 もう1頭はクロフネ。デビュー前から評判を集めた外国産馬で、前走・エリカ賞を3馬身半差つけて一方的に勝っていた。

 3頭の単勝オッズはクロフネが1.4倍、アグネスタキオンが4.5倍、ジャングルポケットが4.8倍。4番人気馬は23.4倍と離れ、誰もが3頭の競馬で間違いないと思っていた。

 前述した“駆け引き”を制したのはアグネスタキオンの河内洋騎手(現調教師)だった。道中、5番手付近で並ぶクロフネとジャングルポケットを背後からマークした。

 4角手前。3頭の中で先に動いたのは松永幹夫騎手(現調教師)騎乗のクロフネ。すかさずアグネスタキオンも外から迫った。角田晃一騎手(現調教師)騎乗のジャングルポケットは内で詰まり、そこからアグネスタキオンを懸命に追いかけようとしたが、エーピーウィザードに外から来られ、1手遅れた。

 直線を向いて先頭に立とうとするクロフネ。そこに外から襲いかかったアグネスタキオン。あっという間に抜き去って突き放す。懸命に踏ん張るクロフネ。遅ればせながら脚を伸ばすジャングルポケット。最後はやはり3頭の競馬となったが、アグネスタキオンが2着ジャングルポケットに2馬身半差をつけてゴールに飛び込んだ。

 ご存じの通り、アグネスタキオンはその後、無傷の4連勝で皐月賞馬へと上り詰め、そのアグネスタキオン不在のダービーはジャングルポケットが快勝。クロフネはNHKマイルCを制した後、ダートに転じてジャパンCダートを圧勝し、ファンを驚かせた。3頭は種牡馬としても成功を収めた。

 3強対決の前から、クラシックへの登竜門と呼ばれ始めていたこのレース。この3頭の決戦によって、一気にレースの格が上がった。そこから中山に場所を移してのG2昇格、そしてついにG1ホープフルS誕生と、レースそのものが異例の出世を遂げた。3頭の功績は非常に大きかった。

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