【サウジC】レモンポップVSウシュバテソーロ ダート界の両雄が初激突!
2024年2月20日 05:30 24日の深夜、日本時間で25日2時40分にサウジアラビアG1「第5回サウジC」が当地のキングアブドゥルアジーズ競馬場でゲートイン。今年は初めて国内でJRAネット投票などによる馬券発売が行われる。昨年パンサラッサが栄冠に輝いた日本勢は今年も5頭が出走予定。ダート界の2大巨頭レモンポップとウシュバテソーロの初対決に注目が集まる。両馬を管理する田中博康師(38)、高木登師(58)が大一番に向けて意気込みを語った。1着賞金1000万ドル(約15億円)を手にするのはどっちだ。
両横綱の大一番。23年最優秀ダートホースを壮絶に争ったレモンポップとウシュバテソーロがサウジの地で初めて相まみえる。
2頭は馬体を併せたことがある。昨年3月、ドバイ遠征前の国内最終追い。厩舎は違えど日の丸を背負う同志。調教パートナーとして切磋琢磨(せっさたくま)した。田中博師は「まさか(1年後に)同じレースに出ることになるとは」と振り返る。レモンはゴールデンシャヒーン、ウシュバはワールドカップ。当時は距離にして“800メートル”の隔たりがあった。ワンターン1800メートルの特殊舞台で行われる世界最高賞金競走が両馬を引き合わせた。
ライバルの印象は。田中博師は「レモンとタイプが違うけれど間違いなく素晴らしい馬」と絶賛。高木師は「ウシュバが調教で動かないので、ぶっちぎられたイメージ(ゴール板では併入)がある」と苦笑い。そして、「お互いに今回はベストな条件ではないと思っているのでは」と異口同音に言葉が続いた。
レモンには距離の壁がつきまとう。「同じ1800メートルでも1周する中京よりは向くと思うが、根本的に忘れないようにしているのは適距離ではないということ。安易には考えずチャレンジする気持ち」と田中博師。距離短縮となるウシュバは道中の追走が鍵になる。高木師は「スタートしてしばらく直線なのでスピードが必要なコース形態。何番手につけて…というタイプではないし、自分の競馬に徹してどこまでやれるか」と展望する。
昨春ドバイでは明暗分かれた両雄だが、海外での敗戦を糧にサウジCに挑む境遇は同じ。田中博師は昨年末の香港国際競走にも有力馬(レーベンスティール、ローシャムパーク)を送り込んだが大敗。「期待を大きく裏切ったことを重く受け止めている。海外遠征では日本の当たり前が当たり前じゃない。“海外だからこうだ”とか先入観にとらわれないよう、実際の馬を見て枠にはめないで調整を工夫したい」。厩舎としても結果が欲しい一戦だ。一方のウシュバは史上初となるドバイワールドCとの同一年W制覇を懸けて挑んだBCクラシックで5着敗退。「アメリカの環境やルールになじめなかった。調教では出入り口をずっと気にしていたし、逆回りで走っている馬にも気をつかってしまって。ゲート練習では隣の扉が先に開いて、音はしたのに自分の前の扉が開かないから馬が怒ってしまった」とアウェー調整の難しさを痛感した。
リベンジを期すサウジ遠征。共に国内での調整は青写真通りに進んだ。
田中博師「入厩した時点で馬の仕上がりが良くて、この馬としては歩様もいい。使い詰めだった昨年のドバイはしんどい思いをさせてしまった。今回は過程が全然違う。充実期にあるのは間違いないし、最近の雰囲気を見るとさらにパフォーマンスが上がるかも、と思わせてくれる」
高木師「叩き良化型で東京大賞典を使った分、調整は楽。海外を経験して精神的に強くなった。体は若々しく、完成の域。脚元に不安がないし、カイバもいくらでも食べる。食事中に近づくと怒った犬のようにうなってね。手を出したら指を持っていかれる。相変わらず凶暴ですよ(笑い)」
日本が誇るダート界の至宝の激突は日本時間土曜深夜2時40分。眠れない週末がやってくる。
◇田中 博康(たなか・ひろやす)1985年(昭60)12月5日生まれ、埼玉県出身の38歳。06年、美浦・高橋祥泰厩舎で騎手デビュー。JRA通算3727戦129勝。09年エリザベス女王杯(クィーンスプマンテ)などJRA重賞3勝。17年に調教師免許取得し、翌18年3月に開業。JRA通算1248戦153勝。
◇高木 登(たかぎ・のぼる)1965年(昭40)5月25日生まれ、神奈川県出身の58歳。88年に競馬学校厩務員課程を修了し、同年9月に美浦トレセン入り。06年に調教師免許を取得し、翌07年3月に開業。14年スプリンターズS(スノードラゴン)でJRA・G1初制覇。JRA通算4677戦359勝。