【天皇賞・秋】ドウデュース95点 めったにない!首筋にまで浮かんだ血管“最高潮の証”

2024年10月22日 05:30

<天皇賞・秋 馬体診断>ドウデュース

 有終の秋へ、ダービー馬が血湧き肉躍る馬首をめぐらせた。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第170回天皇賞・秋ではドウデュースをベラジオオペラとともにトップ採点した。年内で引退が決まっているドウデュースに達眼が捉えたのは首筋にまで浮かんだ血管。最高潮の証だ。

 進むべき道へ向かって馬の奮起を促すことを「馬首を奮い立てる」といいます。群雄割拠の古代中国を駆け抜けた英雄たちの壮大なドラマ「三国志」(吉川英治著)にも馬首を奮い立てて戦場に向かうシーンが描かれています。現役最後となる秋のG1ロードに向かって奮起が求められるドウデュース。その首筋には血管が浮かんでいます。ビロードのように薄い皮膚を持つ馬が鍛え込まれると、前後肢の筋肉にこういう血管が浮かびますが、首にまでくっきりと映るケースはめったにない。前肢(肩から上腕)、後肢(後膝からスネ)とともに、馬首を奮い立てるようにその首にまで血管を浮かばせるドウデュース。よほど体調がいいのでしょう。

 前走宝塚記念時にも指摘しましたが、加齢とともに中距離からマイル仕様の体つきに変わってきました。ダービー優勝当時とは別馬のような筋肉のボリューム。肩や首、胸前、トモが岩のように隆起しています。厚みを増す前後肢の筋肉に挟まれて胴が詰まって見えるほどです。こういう岩の筋肉は素晴らしい加速力を生み出す半面、長い距離をゆったりと走るには邪魔になる。ダービーと有馬記念を勝っているとはいえ、筋肉マッチョな今の姿なら2000メートルの方が戦いやすいでしょう。

 休養明けの分、腹周りには少し余裕がありますが、今週のひと追いと栗東トレセン→東京競馬場の長距離輸送で引き締まるでしょう。立ち姿からは程よい緊張感が伝わってきます。集中した耳の立て方。過不足ないハミの受け方。唯一気になるのが放牧地で草をはんでいる時のような優しい目つきですが、競馬場入りすれば戦闘モードの厳しい目つきに変わってくるでしょう。

 現役最後の秋に挑むのは「三国志」にもなぞらえられる群雄割拠の古馬中距離戦線。G1の花道に向かって奮い立てる馬首には最高潮の証が浮かんでいます。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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