【阪神JF】ヒズマスターピース軽快 名馬タニノチカラほうふつ 国枝師「走りに無駄がない」
2025年12月11日 05:30 2歳女王決定戦「第77回阪神JF」の最終追い切りが10日、東西トレセンで行われ、2連勝中のヒズマスターピースが軽快なフットワークを披露した。送り出すのは来春で定年引退する国枝栄調教師(70)。歴代単独最多となる牝馬G1・13勝目に手応えを膨らませた。
ひと目見て千両の値を打つという。傑作と呼ばれるような価値のあるものはひと目で分かるとの意味。「彼の傑作」(ヒズマスターピース)と命名された栗毛馬の非凡さもその走りをひと目見れば理解できる。首を低く下げ、しなやかな背をバネのように収縮しながら跳躍する、チーターみたいな走法。「びっくりするほど弾む馬ですね」と、前走・赤松賞で騎乗した荻野極が驚きの声を上げた特異なフットワークである。
Wコースで3頭併せの最終追い切り。ロムネヤ(6歳2勝クラス)、アグアフレスカ(2歳新馬)の外からバネ仕掛けの体を伸ばして併入すると、国枝師は思い出の競走馬の名を口にした。「まるでタニノチカラだ」。鼻づらが地面に届きそうになるほど首を沈めた走法で73年天皇賞・秋、74年有馬記念を制した昭和の名馬。東京農工大・馬術部時代にその走りを目の当たりにしたという。「この2歳牝馬も体が柔らかい上に筋力が並外れているんだよ。大きいけど、走りに無駄がない」と同師は加速力に優れたチーター走法の機能性を強調する。
「デビューから2カ月余でグンと良くなった。体も引き締まって、ようやく競走馬らしいシャープな格好になった」。馬体重も新馬の514キロから2戦目512キロ→3戦目・赤松賞496キロと絞れ、現在492キロ。「フィジカルも素晴らしいが、メンタルもいいよ。穏やかな性格で装鞍所に行ってもゆったりとしている。レースでは前向きなうえにコントロールが利く。この2戦はスピードの違いで逃げ切っているが、逃げにこだわってはいない」と続けた。栗東トレセンを経由せず前日輸送で阪神入りするのも輸送を気にしないタフな気性だからだ。
来春で70歳定年を迎える国枝師は阪神JF2勝(09年アパパネ、21年サークルオブライフ)を含めて牝馬G1歴代最多タイの12勝を挙げている。3冠牝馬アパパネ、秋華賞馬アカイトリノムスメ、ステレンボッシュ(桜花賞)は赤松賞をステップにG1ホースに輝いた。「今回が記録更新(13勝目)のラストチャンスになるのか」と寂しそうにつぶやいたが、勝算はある。「これまでG1を勝ってくれた牝馬たちと比べても遜色ない馬だから」
ひと目見て千両の値を打つ。伯楽の目にもかなった「彼の傑作」(ヒズマスターピース)である。

