【チューリップ賞】ソウル放任仕上げ!G1馬アレスに2馬身先着
2017年3月2日 05:30 無敗3連勝を飾った昨年末よりもひと回り幅の増した馬体。春の日差しに琉球漆器のような深い光沢を放つ毛ヅヤ。馬場の外ラチから青鹿毛の女王を見据える藤沢和師が「でも、欠点が一つだけある」と意外な言葉で切りだした。「走るのが大好きなこと。ソウルスターリングは放っておいても自分で走って自分で体をつくっちゃう。だから人まで張り切り過ぎると、ろくなことにならない」。シンコウラブリイなど名牝の勝ち気な気性と向き合ってきた名伯楽の達観。「こういう馬に速い時計は要らない。今日もビシバシなんてやらないよ」
師の予告通り、最終追い切りも最後まで馬なり。時計もWコース68秒0とごく平凡。それでも非凡さは随所にのぞかせる。ゴムまりのように柔らかい筋肉を伸縮させた弾む脚取り。昨年の2歳王者サトノアレスの5馬身後方を進んでいく。直線、手綱を拳ひと握り緩めただけでトップスピードに入った。一流馬だけが備える鋭敏な反応。欧米G1・6勝の母スタセリタそっくりの大きなストライドを繰り出し、僚友のG1ホースを2馬身突き放した。
「阪神JFに比べて体重が20キロ増えている。あの時は輸送で10キロぐらい減ったから差し引き10キロプラス。見た目にも大きくなったよね」と語る師。3歳春に体重を増やし続けた04年桜花賞馬ダンスインザムードを引き合いに出し、「まあ、あの馬ほどは食べないけど、成長している。気持ちも少し穏やかになったよね」と続けた。
阪神JFは見せムチだけで完勝。英G1・10戦全勝(通算14戦14勝)で引退したフランケル産駒最初のG1ホースとなった。調教も含めてノーステッキの女王は成長力という武器まで手に入れ、階段をどこまで上り続けるのだろうか。「これだけの血統だし、クラシックは勝ちたい。マイルの走りはあり得ないほど上手だった」。同師はオーナーと協議の上で春の目標を桜花賞に定めたが、将来の欧州遠征も模索する。「一番の長所?頭がいいこと。デビュー3戦で普通の馬の10戦分の競馬を覚えちゃった」。名伯楽の頼もしげな視線の先では、追い切りを終えた青鹿毛が春の日差しに再び深い光沢を放つ。春の始動に曇りなし。

