菜七子 会心3週連続V、通算37勝目 高等テクニック光った
2018年9月3日 05:30 夏の主役の座は最後まで譲らない。6戦連続で手綱を取ったロマンスガッサンで、菜七子が測ったような差し切り勝ち。自然と笑顔がはじけた。
「前走は早めに行ってバテてしまったので、今日はギリギリまで(追いだしを)我慢しようと決めていた。最後は馬の頑張り。根性で差し切ってくれました。この馬はいつも調子がいい。厩舎の方のおかげですね」
前走、8月11日の新潟2R。早めに先頭に立って失速、3着に終わった経験を糧にした。7枠13番から好スタートを決めると、道中は好位追走。4コーナー手前でも仕掛けを我慢し、満を持して直線でGOサインを送る。馬体を弾ませて加速度を増した相棒は、逃げ粘るブリーズドゥースをゴール手前でかわし、中団から急追してきたイディナロークを半馬身差抑えた。
騎乗プランに加え、お手馬として癖を知り尽くすからこその心憎い高等テクニックも光った。どうしても前へ前へと行きたがる同馬を抑えるため、道中でわざと砂をかぶらせて行き脚を控えさせたのだ。
これで菜七子は自身2度目の3週連続Vで、JRA通算37勝目を挙げた。特筆すべきは今夏の新潟6勝のうち4勝が3歳未勝利戦。しかも、8、6、8、4番人気と人気薄の中で、パートナーに待望の初勝利をプレゼントしてきた。ロマンスガッサンを管理する鈴木伸師も「同じ間違いを次に繰り返さない。真面目に真摯(しんし)に競馬に取り組んでいるから、それが結果につながる。とにかく一生懸命。全てがうまくなっているし、できる限り応援したい」と、21歳に全幅の信頼を口にした。
前日はレース終了後のジョッキー握手会で、ファン250人と触れ合った。25人が参加した騎手の中で菜七子は“1番人気”。女性ファンが赤ちゃんを抱いて近づくと「モチモチで可愛いっ」。勝負師のよろいを脱ぐと、女性らしい柔和なまなざしを向けた。
自身初となる9月開催勝利で、同月70戦目にして「ナナ不思議」の一つを解いた。さらには、この土日で計18鞍に騎乗。女性騎手のJRA一節最多騎乗数も更新した。快進撃の夏は終わった。JRA女性騎手史上初のG1騎乗を目指す菜七子に、今度は実りの秋が待ち受けている。