時代変わっても畠山師の信念変わらず

2019年5月10日 05:30

 【競馬人生劇場・平松さとし】4月28日、平成最後にG1を勝利した日本馬はウインブライト。勝ったのは香港で行われたクイーンエリザベス2世C。管理するのは畠山吉宏調教師だった。

 同師は母方の祖父が青森県で牧場を営み、馬主でもあったため幼い頃から牧場や競馬場へ連れていかれていたという。「カネヒムロは祖父がオーナーブリーダーとして持っていた馬でした。オークスを勝った時(71年)、僕は8歳だったけど実は口取り写真に写っているんです」

 86年には美浦トレセンでホースマンとして働きだした。その当初から目指していた調教師となり開業したのは2000年。04年の共同通信杯を制したマイネルデュプレや翌05年CBC賞を勝ったシンボリグランなどを育てた後、13年にはマイネルホウオウでNHKマイルC(G1)を優勝。開業後、初のG1制覇を飾った。

 17年、ウインブライトで優勝したスプリングSはそれ以来の重賞勝ち。同馬はその後、さらに重賞を4勝、計5勝して香港へ飛んだ。現地の最終追い切り後、気が乗り過ぎたと感じた畠山師が、なるべく他馬とかぶらないように馬場入りさせたり、あえてスクーリングやゲート練習をしなかったりといった手を打ったことが奏功し、大仕事をやってのけた。

 レース前、現地のインタビュアーから「なぜルメールや武豊ではなく松岡なの?」と聞かれた師は次のように答えている。「デビュー以来、1戦を除く全てのレースで松岡君が乗っています。この馬のことを最もよく分かっているのが彼なんです」

 思えばマイネルホウオウで勝利した初G1時に騎乗していた柴田大知騎手も、自身初のG1制覇だった。以前から大舞台だからといって安易に騎手を代えるようなことはしない指揮官だったのだ。ちなみに祖父がカネヒムロでオークスを勝った時も当時まだG1勝ちのない岡部幸雄騎手を乗せ続けての勝利だった。時代は令和になるが、こういう昭和のにおいのする物語があっても良いだろう。(フリーライター)

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