【スプリンターズS】グランアレグリア100点!昨春桜花賞、今春安田に続き心身成熟“三季咲き”
2020年9月29日 05:30 短距離界の名花が秋のG1開幕戦に三季咲きだ。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第54回スプリンターズS」(10月4日、中山)ではグランアレグリアに唯一満点を付けた。達眼が捉えたのは昨春の桜花賞、今春の安田記念に続く3度目のタイトル獲りを可能にする変貌ぶり。馬体採点上位5頭を秋の花になぞらえながら解説する。
彼岸明けを待っていたように初秋の花がつぼみを開き始めました。「謙虚」の花言葉で知られるキンモクセイや「誠実」のリンドウは一季咲き、「情熱」のバラは春秋の二季咲き、「高潔」のクレマチスは四季咲き。競馬の世界ではグランアレグリアが秋のG1開幕に合わせて“三季咲き”です。花言葉こそありませんが、葉より先に花が咲く曼珠沙華(まんじゅしゃげ)のように成長途上で咲いた昨春の桜花賞、今春の安田記念に続き、三たび素質のつぼみを開きました。
牝馬とは思えないパワーみなぎる馬体。今春には未発達だったキ甲(首と背の間のふくらみ)が抜けて、首や肩、トモの筋肉量が増えたと指摘しました。それから半年を経て、一層厚みが増しています。二季咲きの秋明菊の大輪のような大きな筋肉が前後肢にバランス良く付いている。腹周りも分厚くなった。太めには映りません。腹袋までたくましくなったのでしょう。
立ち姿は秋の日だまりに咲くコスモスのように穏やかなたたずまい。涼しい顔をしながら、ゆとりを持たせた引き手綱をゆったりと受けています。後ろから吹きつける風が尾の先端を股の間にくぐらせても、どこ吹く風の余裕の表情。四肢にバランス良く体重を乗せて大地を踏みしめています。
引退まで1年半を切った藤沢和雄調教師が手掛ける晩年の傑作。馬は撫で柄といいます。良しあしは育て方次第との意味。花も同じでしょう。つぼみの時期に温めすぎないことが花の二季、四季咲きの条件なら、競走馬は攻めすぎないことです。今秋のグランアレグリアを花言葉で表すなら「成熟」。心身の成熟が三季咲きを告げています。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。