【菊花賞】矢作師「重み肌で感じる」も自然体 楽しんで“節目”飾る

2020年10月20日 05:30

重圧と期待五分五分で菊花賞にコントレイルで挑む矢作師

 秋華賞で牝馬3冠制覇をなし遂げたデアリングタクトからバトンを受け継ぐ形で、クラシック3冠最終決戦「第81回菊花賞」(25日、京都)に皐月賞&ダービー馬コントレイルが登場。JRA史上初の牡牝ダブル3冠制覇へ挑む。不動の主役でもある2冠馬をさまざまな角度から連日、取り上げる連載「コントレイル 無敗3冠翔タイム」がスタート。まずは決戦ウイークを迎えた矢作芳人師(59)の胸の内に迫った。

 デアリングタクトの松山弘平は秋華賞の後「史上初となる無敗の牝馬3冠。正直、プレッシャーはありました」と吐露した。当然だと思う。松山はプレッシャーを力ずくで乗り越えた。ではコントレイルの矢作師は?驚くなかれ、自然体。誰よりも菊花賞ウイークを楽しんでいると言う。

 「緊張やプレッシャー、ワクワクしている気持ちは五分五分だね。今週はとにかく楽しくやります」

 騎手と調教師という立場の違いがある。30歳の松山と59歳の矢作師では経験も違う。それにしても重圧と期待を五分五分で楽しめるのは、矢作師が当事者であると同時に競馬ファンの視点を持つからだろう。

 無傷5連勝で迎えた神戸新聞杯。結果も求められ、かつ余力を残す必要がある一戦を単勝1・1倍でクリア。「道中、ヒヤヒヤしながら見ていた」と本音を漏らしたが「思った以上の強さだったし、レースぶりは何も問題はなかった。前哨戦として満点の内容。精神的にもどっしりして、春以上に成長していると感じた」と十分な手応えを得た。

 中央競馬史において無敗の3冠馬は84年シンボリルドルフ、05年ディープインパクトの2頭のみ。いずれもJRA歴代最多となるG17勝を挙げる名馬だ。

 「ちょうど自分の節目、節目に無敗の3冠馬が誕生しています。僕が栗東に来て、工藤嘉美厩舎で厩務員として配属された時にシンボリルドルフが記録を達成。そして厩舎を開業した年がディープインパクトでした。それから15年がたっているよね」

 印象深い先達2頭の無敗3冠馬が歩んだ道を自らが手がけたコントレイルが追いかける。これほどの節目もない。3冠については「想像したことがなかった」と言う。「言葉にできないぐらい現実離れしたもの。チャレンジさせてもらえることに感謝しています。そして3冠レースの重みを肌で感じています」

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため続いていた無観客開催の措置が緩和。秋の京都から少しずつながら競馬場にファンが戻ってきた。菊花賞は京都競馬場が大規模改修に入る前のラストG1。「京都が最後なので本当はもっと入ってほしかった。それでも無観客と、お客さんが少しでも入るのでは、もの凄く違います。そういう意味で、ありがたく思っています」。矢作師のみならず、競馬ファンにとっても大きな“節目”となる菊花賞だ。

 ◆矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961年(昭36)3月20日生まれ、東京都出身の59歳。日本有数の進学校、開成高校を卒業後、オーストラリアに渡り武者修行。帰国後の84年、栗東トレセンに入り、厩務員、調教助手を経て04年、14度目の挑戦で調教師試験に合格。JRA通算6946戦672勝、うち重賞44勝、GIは12年日本ダービー(ディープブリランテ)、19年有馬記念(リスグラシュー)など12勝。

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