【皐月賞】エフフォーリア、父も祖父もなし得なかった偉業へ
2021年4月16日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】「“あなたのような人がそんなことを言ってはいけない”と言われたけど、体を見ただけで走るかどうかなんて正直、分かりませんよ」
1500勝も挙げた藤沢和雄調教師は以前、そう言った。シンボリクリスエスの第一印象をうかがった際の返事だ。そして、続けた。「実際、デビュー前は少し調教を強めると腰に疲れが出て、なかなか思うように仕上げられませんでした」
このまま調教だけを積み続けては馬が走るのを嫌になるかも、と1度、競馬に使った。するとあっさり新馬勝ち。騎乗した岡部幸雄元騎手は次のように語った。「この仕上がりでどのくらい走れるか?と思ったけど、直線に向いたら先頭を走る馬が目の前にいたので慌てて追ったら楽に勝っちゃいました」
相当の素質を感じたそうだが、やはりデビュー当初は弱いところが残り、次の1勝を挙げたのは3歳の4月。デビューから5戦を要した。それでも青葉賞を勝ち、日本ダービーの出走権を得た。藤沢和師は当時を振り返る。「青葉賞を勝って“よし!!ダービーだ!!”って思っている時に、騎乗した武豊君に“秋になれば良くなりますよ”と言われてしまいました」
水を差された気分だったというが、すぐ後に名騎手のジャッジの正しさを知った。シンボリクリスエスはダービーで2着に敗れたが秋には3歳で天皇賞と有馬記念を制覇。翌年も両レースを連覇し、2年連続でJRA賞年度代表馬に選定されたのだ。
このように晩成型だったシンボリクリスエスだが、種牡馬としては早い時期から活躍する子も出した。そんな中の一頭にエピファネイアがいた。菊花賞やジャパンCの勝ち馬だが、2歳時も重賞を含む3連勝。皐月賞、ダービーも2着と早い時期から活躍した。
そして今年の皐月賞にはその産駒のエフフォーリア(鹿戸雄一厩舎)が出走する。シンボリクリスエスの現役時代、調教を手伝っていた鹿戸師は「雰囲気がそっくり」と語る。父も祖父もかなえられなかった皐月賞制覇がなるか!?注目したい。(フリーライター)