【ヴィクトリアM】グランアレグリア100点!5度目のG1獲りへ絶好調維持、敗戦ダメージなし
2021年5月11日 05:30 1強ボディーに死角なし。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第16回ヴィクトリアマイル」(16日、東京)ではグランアレグリアに唯一、満点を付けた。達眼が捉えたのは立ち姿に表れた絶好調の模様と操縦性の高さ。5度目のG1獲りは時間の問題だ。
名馬に“絶好調”はいらない。普通の体調があればいい…と語ったのは昭和の名馬シンボリルドルフを育てた故・和田共弘オーナーです。G1・4勝を挙げた令和の名牝グランアレグリアには普通の体調があるのか。大阪杯で4着に敗れた直後の一戦とあって重箱の隅をつつくように馬体の隅々にまで目を凝らしてみると…。
牝馬は疲れが残ると、腹が細くなりやすいものですが、この名牝の腹周りはエネルギーを満タンにしたようにふっくらと見せている。牝馬は体調を崩すと、毛ヅヤを失いやすいものですが、この名牝の被毛は初夏の日差しを浴びてまぶしいほど輝いている。牝馬は気分を損ねると、イライラした立ち姿を見せるものですが、この名牝は穏やかにたたずんでいる。敗戦のダメージはどこにもない。
全身がみずみずしい張りに満ちたつくり。肩やトモには柔軟な筋肉をたっぷりと付けています。腱がしっかり浮き立つ丈夫な脚元。普通の体調どころか、金太郎あめみたいにどこを切っても同じ模様が出てくる。“絶好調”の模様です。
大阪杯は初の2000メートル戦で伸び切れなかった。距離が長かった印象です。昨春から何度か指摘してきましたが、加齢とともに筋肉量が増えてマイラー体形からスプリンター体形に変わりました。それでもマイルの古馬G1(安田記念、マイルCS)を連勝できたのはコントロールが利く気性だからです。
3歳春には耳を前方へ強く立てて前向きさをのぞかせていましたが、年を経るごとにおとなしくなってきた。今回もモグシ(簡易頭絡)だけで引き手を遊ばせています。目線と鼻先、耳の向きは前方のスタッフにしっかりと集中している。とてもよく教育されています。藤沢和厩舎にはこういうしつけの行き届いた馬が非常に多い。その立ち姿をひと目見れば所属厩舎が分かるほどです。
シンボリルドルフが現役だった当時、シンボリ牧場の馬はどれもひと目で所属牧場が分かるほど素晴らしい姿でトレセン入りしていました。そのルドルフの調教に携わった藤沢和雄調教師の引退まで9カ月余。現役最後に手掛ける令和の名牝は“絶好調”を維持して不動の主役を務めます。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。