【菊花賞】アサマノイタズラ×手塚師「ア」っと言わせる
2021年10月22日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】手塚貴久調教師の父親・佳彦さんは足利競馬の元調教師。その縁からか北関東競馬の馬主だった人からある日、連絡が入ったという。
「星野壽市オーナーとの出会いでした」
それが今からかれこれ十数年前の話。オーナーがセレクトセールで購入した馬を預かることになった。
「2008年に3歳でデビューしたシャンディガフという馬でした」
この馬は6戦未勝利で引退。その際、手塚師はオーナーから思わぬ言葉を聞かされた。
「星野オーナーの私に対する第一印象は“生意気”だったそうで、1頭だけ預けたら終わりにしようと考えていたらしいです」
ところが“この1頭”が結果を残せなかったにもかかわらず、翌年も馬を預けてくれた。手塚師が決して“生意気ではない”ことに気付いたということだろう。
やがて星野オーナーは「好きな馬を選んでいい」と言うまで手塚師に信頼を置くようになった。こうして指揮官が牧場で見つけてきたのがディープインパクト産駒の牝馬だった。
「生後1カ月くらいで見させてもらいました。兄姉が走っているわけではないし、大柄で緩い馬だったので評価は決して高くなかったけど、個人的に好きなタイプでした」
この馬は後にアユサンと名付けられて12年にデビュー。この新馬戦を勝利すると、重賞戦線で好走を繰り返し翌13年の桜花賞(G1)に出走。7番人気という低い評価を覆し、見事に優勝してみせた。
最初は1頭だけで預けるのをやめようとした星野オーナーだが、この頃にはすっかり強力なタッグを組むようになった。その後も毎年、手塚厩舎に預けると、重賞を3勝したヤングマンパワーなど活躍馬を世に送り出した。今年もココロノトウダイが中山金杯(G3)で2着するとアサマノイタズラはセントライト記念(G2)を勝利して今週末の菊花賞(G1)に挑む。そういえば手塚厩舎の過去のG1馬にはアユサンの他アルフレードやアジアエクスプレスと頭文字“ア”の馬が3頭もいる。アサマノイタズラが4頭目になるのか。注目したい。 (フリーライター)