スピルバーグの「晩成」見抜いた藤沢和師 引退は損失

2022年2月11日 05:30

2014年の天皇賞・秋を制したスピルバーグ

 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末は共同通信杯(G3)が行われる。12年の同レースで3着したのが後の天皇賞馬スピルバーグだ。管理したのは今月で引退する藤沢和雄調教師。同馬は新馬を勝ち、2戦目でフェノーメノの2着すると果敢に共同通信杯に挑戦した。デビューから2戦を見て、藤沢和師は同時に2つの異なる感情を抱いていた。

 「万事休すと思える位置から勝ち負けに持ち込んだように相当高い能力がある。ただ、進んで行こうとしないから晩成型かも」

 前者に関しては共同通信杯後も毎日杯(G3)やプリンシパルSを経てダービー(G1)に挑ませたことに伯楽の心中がうかがえる。

 また、後者に関しては「血統的なものかな…」と続けて言った。

 スピルバーグの父はディープインパクト。一見、晩成ではないように思えるが、経験豊富なNo・1調教師は少し違った視点で見ていた。

 「ディープインパクトのお姉さんはレディブロンド。彼女は大器晩成を絵に描いたような馬でした」

 藤沢和師が管理したレディブロンドは若駒の頃は弱くてなかなか競馬に耐えうる体にならなかった。デビューしたのはなんと5歳になってから。デビュー戦でいきなり1000万条件を勝利するとその後5連勝。G1のスプリンターズSで4着に敗れるまで快進撃を続けた。

 「スピルバーグにはそんな血が流れている気がします。経験を積ませて年齢を重ねればきっと走ってくるんじゃないかな…」

 当時からそう語っていた。結果、5歳になった14年に天皇賞・秋(G1)を制覇。続くジャパンC(G1)でも3着に好走すると、翌15年には果敢に海を越え、ロイヤルアスコット開催のメイン・プリンスオブウェールズS(G1)に挑戦(6着)するまでになった。伯楽の先見の明というか千里眼というかに驚かされたものだ。

 そんな名調教師が能力とは関係ない年齢という数字だけで引退しなくてはいけないのは、日本競馬界にとっても大きな損失と思え、残念でならない。(フリーライター)

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