迷ったら穴の杉山佳厩舎 今年12勝中1番人気わずか1勝も単勝&複勝回収率100%超え
2022年7月6日 05:30 先週から始まった夏競馬の新企画「夏ラボ」。第2弾は穴党のオサムが「穴の杉山佳明厩舎」を掘り下げる。今年ファンを驚かせたのは5月8日のNHKマイルCで18頭立てシンガリ人気ながら3着に食い込む力走を見せたカワキタレブリー(牡3)だろう。あの激走には、あけるべくして穴をあけた杉山佳明師(38)の明確なビジョンがあった。開業2年目、この夏以降も要注目の新進気鋭厩舎だ。
競馬に格言あり。穴をあける馬は何度でもあける――。穴をあける厩舎もしかり。昨年開業し、穴党熱視線の杉山佳明厩舎だが、NHKマイルCはカワキタレブリーの大駆けに面食らった。単勝229・1倍の18頭立て最低人気馬が1番人気セリフォスを抑え、3着に食い込んでみせたのだから。杉山佳師は振り返る。
「半年前、デイリー杯2歳S(3着)に使った時からNHKマイルCを目標に、寸分の狂いもなく持っていけましたから。状態そのものは良かったんです」
年明けの白梅賞で1勝クラスを勝ち上がり、前哨戦のアーリントンCは先行して11着。それでも指揮官は白旗を揚げなかった。「展開ひとつで上位食い込みもある」と虎視たんたんだった。4角14番手から3F33秒8の上がりを使えたのは望外としても、仕上げに関しては完璧だった。
杉山佳厩舎が穴をあける、その理由は大まかに言えば2点。ひとつは先見の明だ。馬の距離適性、コース適性を把握し、先んじてローテーションを明確にイメージする。番組選択の確かさが好成績につながっている。「番組とスケジュールは半年先まで、しっかり頭に入っています。もっと先を読む力を身につけたいですね」と話す。「パソコンでデータを管理?」の質問には「そこは手書きですが」と笑った。
開業2年目、まだ18馬房に過ぎないが、牧場と連携し、馬房をうまく回転させている。出走回数の多さも厩舎の特長だ。このあたりはリーディング上位常連の矢作厩舎と共通する。ふたつ目。人気にならない理由は調教面にある。「馬にストレスをかけることなく、レースに使えるように。馬に楽しくない調教はしない。ストレスを残さない」。これをポリシーとする。速い調教時計は一見、目を引くが大切なのは中身、馬のメンタルだと言う。ストレスフリーで使えることが実戦でのダメージを軽減させ、使い減りをなくす。これが時として大駆けにつながっている。
今年、上半期終了時点で12勝は馬房数を考えれば上々の成績。しかも挙げた12勝のうち1番人気はわずか1勝だけ。今年の単勝回収率は152%、複勝回収率が118%だから買い続けていれば黒字収支。穴党には実に魅力的な厩舎だ。
NHKマイルCで穴をあけたカワキタレブリーは早々に帰厩しており、8月中に新潟の2勝クラスで復帰予定。「目標は来年の安田記念ですね」と笑う。明確なビジョンは自身の未来へも向けられている。
《最高勝率は福島の18・2%》杉山佳師のレース選択の確かさは競馬場別成績にも表れている。夏場のローカル競馬は特に稼ぎ時だ。コース適性を分析し、ベストの条件と判断すれば長距離遠征もいとわない。最高の勝率を誇るのは福島で18・2%、連対率は27・3%。札幌が勝率14・3%、小倉も12・9%。おしなべて人気薄ゆえ、配当的な妙味は十分だ。今週土曜は小倉メイン・マレーシアC(ダート1000メートル)にレジェモー(牝5)が出走予定。前走14着から変わり身があるかも。
◇杉山 佳明(すぎやま・よしあき)1983年(昭58)12月17日生まれ、兵庫県出身の38歳。2010年に栗東・庄野厩舎の厩務員になり、翌年から調教助手。13年に沖厩舎、19年に上村厩舎へ。20年に調教師免許を取得し、21年3月に開業、同27日に中京1勝クラスのエピローグで初勝利を挙げた。JRA通算350戦26勝。