「欧州で無双できた…」偉大なマイラーのタイキシャトルに合掌

2022年8月19日 05:20

1998年の引退式でタイキシャトルの手綱を引く藤沢和師

 【競馬人生劇場・平松さとし】
 先週末、フランスでジャックルマロワ賞(G1)が行われた。それに伴い、先週の当コラムでは24年前に同競走を制したタイキシャトルの話を記した。すると、奇遇なことに今週17日にその名マイラーが老衰で死んでしまったというニュースが飛び込んできた。

 そこで、改めて同馬を管理した藤沢和雄元調教師に話を伺った。先週、記したように選択肢として英国のサセックスS(G1)も挙がっていたことに対し、伯楽は改めて次のように語った。

 「日本の夏はとにかく暑いので、一日も早くヨーロッパへ連れて行きたいという気持ちがありました。だから8月のジャックルマロワ賞ではなく、7月のサセックスSを考えたのです」

 この案は「(サセックスSの舞台となる)グッドウッド競馬場は日本馬にはタフ」という現地の大樹ファーム関係者の意見により、霧散したことも先週記した。これについて、藤沢元調教師は今回、改めて言った。

 「当時は私も納得したけど、今、思うと行っておくべきでしたね」

 そう考える理由は2つあった。一つは先述した通り“日本の夏の暑さ”であり、藤沢元調教師は冗談を交えて続けた。

 「日本の夏の炎天下で走らされる馬はかわいそうです。私が現役時代は夏競馬をやめられたら困ることもあったから黙っていたけど、今は引退したから言わせてもらいます。日本の夏は、競馬をやらない方が良いです」

 笑いながらそう言った後、もう一つの理由を述べた。

 「タイキシャトルは能力が高くて、スピードが違いました。アウェーの立場にもかかわらず、直線の1600メートルという舞台であれだけ強い競馬ができる馬はそうそういません。ヨーロッパに置いたままにすれば、向こうのマイル戦線を無双できた。そのくらい抜けた馬だったと思うのです」

 通算成績13戦11勝で、1600メートルに限ればマイルチャンピオンシップ(G1)連覇に安田記念(G1)とジャックルマロワ賞(G1)など7戦7勝。世界を駆けた偉大なる名マイラーに合掌。 (フリーライター)

 《追悼》JRAは18日、17日に死んだタイキシャトルを追悼し、関連行事を実施すると発表した。20日の3場メインレースは「タイキシャトル追悼競走」の副題を付して実施。全国の競馬場および競馬博物館(東京競馬場内)で献花台・記帳台を設置、全てのウインズで記帳台を設置する。

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