【阪神JF】ドゥーラ95点 ブラボーな鼻の穴 細身でも機能性と柔軟性兼備
2022年12月6日 05:30 2歳女王決定戦に断を下すのは大きな鼻の穴だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第74回阪神JF(11日、阪神)では札幌2歳S優勝馬ドゥーラをリバティアイランドと共にトップ指名した。達眼が捉えたのは酸素をたくさん吸収できる鼻の穴。ライバルの鼻を明かす重要部位だ。
コロナ感染予防のため「鼻呼吸」が呼びかけられています。ウイルスを直接ノドの中に取り込んでしまう「口呼吸」とは異なり、「鼻呼吸」では鼻毛がウイルスを取り除くフィルター(マスク)の役割をしてくれるからです。日本では口呼吸が多数派で、大人の7割、子供の8割が口で息をしているそうです。日本人の多くが鼻呼吸に切り替えれば感染ペースは格段に落ちるとか。
馬のコロナ感染例はありませんが、万が一、感染したとしても感染ペースは上がらないでしょう。全ての馬が鼻呼吸だからです。レース中に息が上がっても口呼吸ができない。酸素を取り込むために重要なのは鼻の穴です。ドゥーラのセールスポイントも鼻の穴。かわいい目と不釣り合いなほど特大です。最近、鼻の穴の大きさにコンプレックスを感じて美容整形外科で鼻翼縮小施術を受ける若者が増えているそうですが、馬にとってはより多くの酸素を取り入れられる大切な部位。鼻翼縮小なんてとんでもない話です。
私が調教師時代に管理していたダイナフェアリーという牝馬も鼻の穴が大きかった。G1には手が届きませんでしたが、JRA重賞5勝。古馬になってエプソムC、新潟記念、オールカマーを制し、牡馬勢の鼻を明かしたものです。
ドゥーラは大きな鼻の穴とともにしなやかな筋肉も備えている。ボリュームがない代わりに非常に柔軟な筋肉を前後肢にバランス良くつけています。各部位が滑らかにリンクしているためリズミカルで無駄のない動きをする。父ドゥラメンテ譲りの細身でも柔軟性と機能性に優れた馬体です。
前進気勢も強い。じっと立っているよりも早く体を動かしたいと尾に力を入れ、ハミを受けた口角に泡を付けている。鼻息の荒い様子が垣間見えます。毛ヅヤも良好。休み明けでも太め感なく、仕上がっています。
札幌2歳Sで牡馬勢の鼻を明かした大きな鼻の穴。「鼻呼吸」で走り切る競馬では大きな武器になります。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。