【書く書くしかじか】再考を期待したいJRA賞「MVJ」の選出方法

2023年2月8日 10:06

22年JRA賞授賞式でMVJに選ばれた戸崎(左)

 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の浜田公人(47)が担当する。22年度JRA賞の結果から、騎手表彰のあり方について考察してみた。

 先月30日に授賞式が行われた22年度JRA賞。騎手部門では川田将雅が「最多勝利」「最高勝率」「最多賞金獲得」の3タイトルを独占。岡部幸雄、武豊、ルメールに次いで史上4人目となる「騎手大賞」に輝いた。一方、年間の“最高殊勲騎手”である「MVJ」には戸崎圭太が選出された。この結果に、ファンからはSNSなどで疑問の声が上がったのだ。

 騎手大賞はプロ野球に例えるなら3冠王。そのハードルは高く07~17年は11年連続で該当者なし。18年にルメールが受賞し、今回の川田が4年ぶりの受賞。史上4人目という難易度からも、騎手にとっての最高の栄誉である。一方、MVJは13年に創設。前記の騎手3部門に「騎乗回数」を加えた4部門のポイント制。各部門の上位15人に15~1点が付与され、総合得点で争う。今回なら川田が3部門で1位15点=計45点を獲得も、騎乗回数では上位15位に入れず0点。対する戸崎は4部門で2、4、6、5位と平均的にポイントを重ね、計47点で川田を上回っての選出となった。

 騎手が目指すのはリーディング=最多勝利数。勝率や賞金は、あくまで勝利を求めた結果の“副産物”の意味合いが強い。騎乗回数は若手騎手の目標となっている側面もあるが、表彰対象とはなっていない。これを勝利数と同等のポイントとして扱う現行のMVJは、果たして正解なのだろうか。複数の関係者の意見を参考にした私案になるが、例えば勝利数への配点を他部門より引き上げるのはどうだろう。あるいは、いずれかの部門1位を、MVJ受賞の条件にするというのも一考の余地がある。

 MVJは創設された13年から昨年まで、全て最多勝利騎手が受賞してきた。ノンタイトルでの受賞は今回が初。ゆえに浮き彫りとなった制度の課題とも言える。戸崎は勝利数全国2位、関東1位という優秀な成績を収めてのMVJ。しかもルールに則した受賞だ。本来なら手放しで称賛されるべきなのに、一部から疑問の声が上がったことは残念に思う。ただ、リーディング上位騎手が騎乗回数を絞る傾向から、今後も同様のケースが増える可能性もある。そうなればMVJの価値を問う声が強まるはずだ。栄誉ある賞だけに、誰もが納得する形で決まってほしい。読者の方々はどう感じただろうか。

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