【書く書くしかじか】大前進のJRAライブ配信 2次利用で歯がゆさも

2023年2月22日 10:05

 ▼日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は美浦取材班の高木翔平(32)が担当。ついに今月25日から中央競馬でもレースのライブ配信がテスト的にスタート。それについての意義、そして若者を中心に流行するSNSとの在り方について考えた。

 ついに中央競馬の全レース動画がライブ配信で見られるようになる。本格始動は3月25日からだが、今月25日から先駆けてテスト配信を開始。スマホ、PCなどでJRA公式サイトの出走馬、オッズページに表示される「レースライブボタン」からアクセスが可能となる。テスト1週目の25、26日は中山、阪神、小倉の1~8Rが視聴可能だ。

 待ちに待ったファンも多い施策だろう。これまではレース終了後、JRAの公式サイトにレース動画がアップされるのに5~10分ほどのラグがあった。馬券を購入したレースの結果をうっかり見ないよう、細心の注意を払いながら動画ページまでたどり着く方も多かったのではないだろうか(自分は薄目で視界をぼやけさせていた)。すでにリアル配信を行っている競輪、ボート、地方競馬など他ギャンブルから遅れての開始とはなったが、どこでも馬券が買える即PATが普及した今、大きな一歩と言えるだろう。

 次の争点としては全公開となるレース映像の2次利用問題か。現在、JRAは動画を含める「全てのインターネットメディアに掲載される情報」の2次利用を認めていない。数々の権利関連、動画に映り込むファンのプライバシー問題などが絡み無断転載はもちろんNGだ。ただ、現状ではSNSとの相性は悪い。YouTubeではJRA公式チャンネルでレース映像は見られるが、何百万人とフォロワーがいるインフルエンサーたちがギャンブル関連の動画を上げる際は他ギャンブルを扱うパターンが大半となっている。担当記者として“バズった”ギャンブル動画が中央競馬でない場合は歯がゆい気持ちになる。ある調査ではYouTubeを利用する若者の割合は90%。いわゆる“二次創作”で加速度的に認知度が広まる昨今、新規ファン獲得に最も直結するツールだと思うのだが。

 大先輩の記者たちはよく「昔は東なら西、西なら東のレースを見るのも一苦労だった。所属が違う馬のことはあまり知りようがなかった」と教えてくれる。それを考えれば、今回の新施策を含めて競馬を楽しむ方法は一気に進化してきた。これからも時代に合ったスピード感のある変化を望むばかりだ。

 ◇高木 翔平(たかき・しょうへい)1990年(平2)4月29日生まれ、広島県出身の32歳。15年入社で競馬班一筋。

特集

2023年2月22日のニュース