ハーツクライ 22歳で死す…05年有馬でディープ撃破、06年ドバイシーマC制覇

2023年3月11日 05:00

05年12月25日の有馬記念を制したハーツクライ。右は2着のディープインパクト

 名勝負をありがとう。JRAは10日、05年有馬記念、06年ドバイシーマクラシックを制し、種牡馬としても日本競馬に大きな足跡を残したハーツクライ(牡、父サンデーサイレンス)が9日、20年の種牡馬引退後もけい養されていた社台スタリオンステーション(北海道安平町)で起立不能となり、死んだと発表した。22歳だった。

 現役時にターフを沸かせ、引退後も種牡馬として数多くの活躍馬を出した名馬が世を去った。現役時のハーツクライを管理した橋口弘次郎元調教師(77)は「聞いて驚きました。まだ22歳ですから早い」と残念そうに声を絞り出した。「つい、この間まで現役だったような感覚。ディープインパクトの名前が出るたびに、あの有馬記念を取り上げてもらえるし、翌年にドバイシーマクラシックを圧勝したことが一番の思い出。次のキングジョージ(英国)で負けて、悔しい思いもしたけど本当にいい競馬をさせてもらいました」。かつての勇姿に思いをはせた。

 ダイワメジャー、キングカメハメハ、デルタブルースと強豪ぞろいの04年クラシック世代。3冠皆勤を果たしダービー2着。05年も宝塚記念2着、ジャパンC2着。どうしてもG1に手が届かなかったが有馬記念で歓喜の瞬間が訪れた。それまでの後方待機から一転して先行策。コンビ結成3戦目、当時26歳のルメールが力をフルに引き出し断然の1番人気(単勝1・3倍)に支持された1歳下の無敗3冠馬ディープインパクトに半馬身差をつけてV。この年のJRA賞最優秀4歳以上牡馬に選出された。

 06年夏の英国遠征から帰国後、秋初戦のジャパンC1週前に橋口氏はノド鳴りを公表。手術の必要がない、軽度の喘鳴(ぜんめい)症とはいえ「レース後ではなく、前もって状況を伝えておきたかった」と説明した。そのジャパンC10着がラストランとなった。

 強い産駒にも恵まれた。アドマイヤラクティ、ジャスタウェイ、ヌーヴォレコルト、シュヴァルグラン、スワーヴリチャード、リスグラシュー、サリオス、ドウデュースなどがG1勝ち。橋口氏はハーツクライで2着だった悲願のダービー制覇を10年後(14年)にハーツクライ産駒ワンアンドオンリーで達成。「現役時だけでなく種牡馬としても素晴らしかった。ありがとう、ゆっくり休んでほしい。ただそれだけです」。感謝の思いを口にした。

 ▼社台ファーム・吉田照哉代表 最期の最期まで気高く、弱みを見せずに旅立ったと社台スタリオンの担当者から聞きました。勝ったレース、負けたレースも含めていろいろな景色を見せてくれました。感謝しています。どうか安らかに眠ってほしいと思います。携わってくださった全ての関係者の方々、応援していただいたファンの皆さま、配合相手に選んでくださった生産者の皆さま、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 ▼クリストフ・ルメール騎手(現役時、有馬記念、ドバイシーマクラシックを優勝)私にとってのチャンピオンの訃報を聞いて、とても悲しく思います。日本での私のスタートは全てこの馬からでした。伝説は死にません。(ツイッターから)

 ◆ハーツクライ 父サンデーサイレンス 母アイリッシュダンス(母の父トニービン)01年4月15日生まれ 栗東・橋口弘次郎厩舎 馬主・社台レースホース 生産者・北海道千歳市の社台ファーム 戦績19戦5勝(うち海外2戦1勝)、総獲得賞金9億2536万900円。

特集

2023年3月11日のニュース