成長へつながったエアシャカールの英挑戦
2023年7月28日 05:00 【競馬人生劇場・平松さとし】現地時間29日、英国アスコット競馬場でキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1、芝2400メートル)が行われる。
今年はディープインパクト産駒で英愛のダービーを制したオーギュストロダン他、G1馬が多数出走を予定。注目の一戦となっているが、過去には幾例かの日本馬や日本人騎手がここに挑んでいる。
例えばディープインパクトの主戦だった武豊騎手が騎乗したのは2000年。手綱を取ったのはエアシャカール(栗東・森秀行厩舎)だった。
当時のヨーロッパの、この路線のチャンピオンホースだったモンジューなどを相手に、青いシャドーロールを揺らしながら挑んだ同馬だったが、結果は7頭立ての5着。翌日にはフランスのドーヴィルに渡っていた武豊騎手は、そこで「現時点では力の差を感じました」と語った。
この時点でのエアシャカールは皐月賞(G1)こそ制していたが、まだ3歳の身。日本ダービー(G1)でアグネスフライトの鼻差2着に敗れた後の渡欧。かなり思い切った挑戦だったことが分かるが、当時、森調教師は次のように語っていた。
「3歳で重量面でのアドバンテージがあるし、一緒に遠征できる馬もいたので決断しました」
一緒に遠征したのはアグネスワールドやドージマムテキ。
結果、アグネスワールドはロイヤルアスコット開催のキングズスタンドS(当時G2)を2着すると、続くジュライC(G1)は見事に優勝。日本馬として初めて競馬発祥の地・英国のG1を制してみせた。
また、エアシャカールについて、武豊騎手は次のようにも続けていた。
「今回は力の差を感じたけど、まだ若い馬なので、この経験は必ずや今後に生きると思います」
その後、帰国したエアシャカールは菊花賞(G1)を優勝。最も3冠馬に近づいた2冠馬になり、天才騎手の言葉を証明してみせた。
さて、今年は日本馬や日本人騎手の挑戦はないが、冒頭で記したようにオーギュストロダンが出走を予定している。ディープインパクトの命日(30日)を前にラストクロップが日本に朗報を届けてくれるのか。刮目(かつもく)しよう。 (フリーライター)