【菊花賞】サトノグランツ95点 菊の輝きはダイヤの記憶…父譲りの光るステイヤー体形

2023年10月17日 05:30

サトノグランツ

 菊の大輪を咲かせる父譲りの体形だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第84回菊花賞(22日、京都)では皐月賞馬ソールオリエンスと神戸新聞杯1、2着のサトノグランツ、サヴォーナをトップ採点した。中でも達眼が捉えたのはサトノグランツのステイヤー体形。16年の菊花賞を制した父サトノダイヤモンドとダブって映る長距離仕様のボディーだ。

 初めて経験する3000メートルのG1レースに求められる条件とは何か。スタミナにあふれた血統を挙げる人が多いでしょう、ステイヤーの体形を挙げる人もいるでしょう。長距離戦のゆったりとした流れにも折り合える気性を挙げる人がいるかもしれません。血統、体形、気性。菊花賞に必要な3つの条件を十全に備えた馬が1頭だけいます。

 神戸新聞杯を勝って勢いに乗るサトノグランツ。この鹿毛の馬体を10人のホースマンに見せれば、10人とも長距離馬だと即答するでしょう。すらりと胴長のシルエット。首差しと胸囲、腹周りは細いのに肩とトモ(後肢)の筋肉が発達している。典型的なステイヤー体形です。

 7年前の菊花賞を完勝したサトノダイヤモンドの産駒。余裕のある体のつくりは父譲りです。ダービー時の馬体診断では「菊花賞まで追いかけたい長距離ホース」と書きましたが、そのステイヤー体形はひと夏越しても変わりありません。

 立ち姿にも長距離資質が表れています。力み一つなく、放牧地でのんびりしている時のようにもっさりと立っています。少しレイジー(怠惰)に見えるほどです。長距離のスローペースにも気負わずに走れるでしょう。

 唯一気になるのは顔つきです。耳と目に力を入れ、鼻孔を開きながらカメラマンをにらみつけている。ダービー時の穏やかな顔つきとは一転した、向こうを張るような表情。こういう表情を浮かべながらレイジーな立ち姿を見せる馬は鞍上から指示を出されてもすぐ反応しません。加速するまで時間がかかる。そんな特徴を知り抜く川田騎手は追い出しを早くするかもしれません。リバティアイランドを牝馬3冠のゴールに導いた秋華賞のように…。サトノグランツはロングスパートにも耐えられるスタミナの持ち主だからです。

 3歳夏を越しての成長こそ感じられませんが、体調は申し分ありません。抜群の毛ヅヤ。秋の穏やかな日差しを浴びて、鹿毛の被毛が赤褐色の光沢を放っています。腹や後膝(こうしつ)、尾の付け根に見える差し毛は銀色に輝いています。3000メートルの舞台では金色に輝けるステイヤーです。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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