【ジャパンC】スターズオンアース100点 漆黒の輝き 別格の最強馬に挑むスーパーボディー

2023年11月21日 05:30

スターズオンアース

 G15連勝中の最強馬に挑む資格を得たのは黒いドレスの女王だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第43回ジャパンC(26日、東京)ではスターズオンアースに100点満点を付けた。達眼が捉えたのは冬の牝馬とは思えない黒光りする毛ヅヤと大型牡馬並みの筋骨。別格の190点を付けたイクイノックスにも挑めるスーパーボディーだ。

 近年の競馬界は女帝の時代といわれます。64年ぶりにダービーを制したウオッカを皮切りに同期のダイワスカーレット。ブエナビスタ、ジェンティルドンナ、リスグラシュー、クロノジェネシス…。アーモンドアイはG18勝の新記録を樹立しました。今ジャパンCでイクイノックスとの対決が注目されるリバティアイランドもレジェンド級の牝馬です。しかし、体つきにこだわるならスターズオンアースはこの3冠牝馬に見劣りしない。2400メートルの舞台なら、わずかにスターズの馬体に軍配が上がります。

 480キロ台の馬体重でも筋骨のたくましさは500キロ超の大型牡馬を上回っている。相変わらず際立つキ甲(首と背中の間の膨らみ)。大きさばかりか、長さも幅もあるキ甲はとても牝馬とは思えない。上腕から前腕、マタからスネにかけての隆起した筋肉。これほど分厚い筋肉を付けた牝馬は珍しい。キ甲と前後肢の筋肉が発達しているため立ち姿にどっしりとした安定感が備わっています。

 その立ち姿には中長距離ホースらしい落ち着きもある。ゆったりとハミを受ける顔も賢そうに見えます。レースに行けば騎手の指示をしっかり受け止められる、操縦性の良さもうかがえます。右前の蹄不安で天皇賞・秋を回避しましたが、右前肢に特筆すべきダメージは残っていません。馬体は少し太めに映りますが、今週のひと追いで絞れるでしょう。

 背中のつくりに余裕がある中距離体形。背中が短いマイラー体形のリバティアイランドとは対照的です。2400メートルの舞台で3冠牝馬をわずかに上回るのがこの体形です。

 黒鹿毛の被毛は気温が下がっても漆黒の光沢を放っています。この時季になると、牝馬は体を冷やさないように牡馬より早くくすんだ色の冬毛を伸ばす傾向がある。出産という大仕事を受け持つ牝馬の本能が働くからです。しかし、スターズオンアースには冬毛が全く見られない。母性本能よりも競走本能が強いのか。よほど新陳代謝が活発なのか。ともあれ、体調の良さを雄弁に物語っています。

 3年前のジャパンC。有終の美を飾ったアーモンドアイにも冬毛はなかった。その被毛は女王の退位式に合わせて仕立てたサテンのドレスのように美しく輝いていました。スターズオンアースは女王の就任式に合わせて新調したドレスのような輝きです。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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