【桜花賞】アスコリピチェーノ95点 女王にふさわしい「心身のゆとり」

2024年4月2日 05:30

心身ともにゆとりあるアスコリピチェーノ

 桜戦線異状なし。馬体も実績通りに“東の2強”だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第84回桜花賞(7日、阪神)では昨年の阪神JFで1、2着したアスコリピチェーノ、ステレンボッシュをトップ採点した。達眼が捉えたのは2度目の栗東滞在となった両馬の立ち姿の変化だ。

 習うより慣れよといいます。教えてもらうよりも場数を踏んで慣れた方が身につく。競馬にもそのまま当てはまる金言です。例えば、前走・阪神JFで1、2着した関東馬のアスコリピチェーノとステレンボッシュ。両馬とも前走時に続き栗東トレセンで調整を進めていますが、2度目の栗東滞在とあって環境にも慣れたのでしょう。明らかに気配が違う。特にアスコリピチェーノは顔つきまで変わってきました。

 阪神JF時には鷹のように鋭かった目が穏やかになっています。ハミの受け方にも余裕が出てきました。前走時から一転、力みのない立ち姿。リラックスしているのでカイバも進むのでしょう。余裕がなかった腹周りもふっくらしています。

 ダイワメジャー産駒には父譲りの筋肉マッチョが多いが、アスコリピチェーノはスラリとしなやかな体形。筋肉の量はさほど多くない代わりに柔軟性に富んだ筋肉の質を備えています。首差しが奇麗に抜け、キ甲(首と背の間のふくらみ)から肩先までの傾斜も滑らか。首が太くてガッチリとしたマイラー体形の父とは似ても似つかぬ中距離体形です。

 キ甲はまだ抜けていません。成長途上と言っていい。キ甲がしっかりと抜けているステレンボッシュと比べて完成度では劣っていますが、距離の融通性はこちらの方が上。オークスの2400メートル戦にも対応できるでしょう。両前肢の硬めのつなぎを補完するように柔らかい膝が着地時の衝撃を吸収しています。毛ヅヤも良好。冬毛は残っていません。

 習うより慣れよ。栗東トレセンの環境にも慣れた昨年の2歳女王が身につけたのは…。桜の女王にふさわしい心身のゆとりです。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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