【天皇賞・春】ゴールドプリンセス淀で輝け!居城寿与氏“父子2代の夢”
2024年4月24日 05:28 春G1シリーズの水曜企画は「G1 追Q!探Q!」。担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。春の最強ステイヤー決定戦「第169回天皇賞・春」は大阪本社・坂田高浩(39)が担当。ゴールドアクター産駒ゴールドプリンセスの馬主・居城寿与氏に「オーナーブリーダー」「産駒の特徴」「天皇賞・春」の3テーマを問う。
ゴールドプリンセスを送り出す居城寿与氏はゴールドアクター産駒がG1初出走となることに特別な感情を抱いている。「やっぱりゴールドアクターの子供で出走できるのはうれしいです。しかも初年度産駒でね」と喜びもひとしおだ。ゴールドアクターを所有していた父・要氏にとって初のG1タイトルが、同馬が8番人気で制した15年有馬記念だった。寿与氏は「こんなことが現実になるんだなと。凄い馬。人生観が変わりました」と当時を振り返った。
翌16年6月に父が死去。その後、寿与氏が馬主業と牧場経営を引き継ぎ、18年秋にゴールドアクターが引退すると種牡馬として供用を開始。「ゴールドアクターの子供で競馬を攻めていくんだと。他の人がやらないようなことをしようと、牧場にいる肌馬(繁殖牝馬)のほぼ全てにゴールドアクターをつけました」と覚悟を決めた。20年生まれの初年度産駒がいきなりG1出走へ。思いは実を結びつつある。
ゴールドアクター産駒はどんなタイプが多いのだろうか。「うちの牧場だけで毎年10頭近くつけているんですけど、ほぼ全部がお母さんの方に似ていますね」と分析する。ゴールドプリンセスの当歳時の印象で言えば「ゴールドアクターだらけのうちの子供たちの中では奇麗な、エレガントな馬です」という。母ゴールドエルフについては「バランスが良く、格好のいい馬。現役の時に南関東で走っていた時から、できれば長い距離で走らせたいな、と思っていました」と語り、その母系の特徴がゴールドプリンセスに色濃く出て、長距離適性につながっているのだろう。ゴールドアクター産駒では現在3勝クラスのゴールドバランサー(牡4=鈴木慎)も活躍中。「どの馬でもいいから走ってくれたら…というのはありましたし、思ったより頑張ってくれています」と産駒の奮闘を喜んだ。
ゴールドプリンセスは前走が3勝クラスとはいえ、3000メートルの松籟S快勝で長距離適性の高さを示した。天皇賞・春でも期待が高まる。前走後は6日の大阪―ハンブルクCを次走に予定していたが、ここに目標を切り替えた。「疲れが思ったより抜けないということで馬の状態次第となって、それから雰囲気が良くなったんです。そこで番組を探してみたら天皇賞がありましたので」と経緯を説明する。父ゴールドアクターが16年1番人気12着、17年5番人気7着と結果を出せなかった舞台。「(父は)2500メートルぐらいがベストで3000メートルを超えると苦しいのかな、というのはありました」と振り返り「娘は肌馬のスタミナとパワーを受け継いで、適性はお父さんより長いところなのかなと思います」と目を細めた。重賞初挑戦がいきなりG1。相手が格段に強くなることを承知しつつも「少しぐらい、いいところを見せてくれるんじゃないかなと思っています」。伸び盛りの4歳牝馬がどこまでやれるか――。大舞台の走りを楽しみにしている。
◇居城 寿与(いしろ・ひさよ)北海道札幌市出身。美浦トレセン近くで開業した居城飼料、北海道新冠町にある北勝ファームの代表取締役。15年有馬記念を制したゴールドアクターの馬主でもあった父・要氏が16年に亡くなった後、牧場経営を引き継ぎ、オーナーブリーダーとして活動。主な現役所有馬はゴールドハイアー(24年総武S1着)、ゴールドエクリプス(23年小倉記念3着)など。
【取材後記】言葉の端々からオーナーブリーダーとしての信念が伝わってきた。牧場にいる肌馬のほぼ全てにゴールドアクターを種付けしていることに関して「大変危険な賭けをしているなっていうのは毎日、思っていますよ」と言い切る。「一生かけて、どれか1頭ぐらいかは(活躍馬が)出ないかな、と思って始めました」と続けた。
父から引き継いだ北勝ファーム(北海道新冠町)は繁殖牝馬が10頭ほどの小さな牧場だった。生まれた子馬を売り出すことはほとんどなく、自身の所有馬として走らせてきた。「ゴールドアクターを種馬として北勝ファームのブランドをつくろうと。人と同じことをしても競馬って面白くないじゃないですか」と笑う。突然の取材にも気さくに対応していただき、情熱とユーモアがあふれる口ぶりに引き込まれた。血のドラマに触れたとはいえ、まだほんの一部分。またじっくり、お話を伺いたいです。(坂田 高浩)