【NHKマイルC】ジャンタルマンタル95点 距離短縮でG1主役返り咲きへいざ参る

2024年4月30日 05:30

ジャンタルマンタル

 馬具を見れば、マイラー気質が分かる!鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第29回NHKマイルC(5月5日、東京)では昨年の朝日杯FSを制したジャンタルマンタルをトップ採点した。達眼が捉えたのは、新たな馬具を装着するほど強まった前進気勢。2000メートル戦の皐月賞では3着に敗れたが、マイル戦に替わってG1の主役に返り咲くか。

 馬を御しやすくするために人は3000年以上も前から多様な馬具を考案してきました。ハミひとつとっても気性や癖に合わせたさまざまな形が作られています。裏返せば、馬具をチェックすることで、どんな馬なのかおおよそ見当がつきます。たとえば、ジャンタルマンタル。過去のG1馬体写真と今回の写真を見比べれば、前進気勢が強くなったと分かります。朝日杯FS、皐月賞時はリングバミだけの装着でしたが、今回は新たにチェーンシャンク(口にかませる鎖状の矯正馬具)も着用して写真撮影に臨みました。チェーン(鎖)は押さえるのに苦労する馬に使用します。私は使ったことがありませんが、上歯ぐきと上唇の間に鎖を掛けることで高まる気持ちを抑え込むのです。そんな矯正用馬具の着用からうかがえるのが前進気勢の強さ。促さなければ動かないおっとりした気性をステイヤー気質と呼ぶなら、前進気勢の強さはマイラー気質と言い換えてもいいでしょう。

 今回は馬具診断かと言われそうなのでいつも通り馬体診断をすると…。立ち姿にも前進気勢が表れています。皐月賞時よりも前肢に強い負重をかけて立っています。鋭くなった目、とがった鼻先。レースを重ねるごとに顔つきもきつくなっている。ここまで前進気勢が強くなると、流れの緩い中長距離戦で折り合いをつけるのは難しい。名より実。ダービーではなく、NHKマイルCを選択したのは正解でしょう。

 体つきもマイル仕様です。全身の筋肉が岩のように隆起している。皐月賞時にも述べましたが、ダートの走りも見たくなるほどの筋肉マッチョ。背中から腰にかけてのトップラインの筋肉も発達しているが、尻、臀部(でんぶ)も凄い。加えて、太い首は筋肉でますます厚みを増しています。一歩前に踏み出したら押さえるのに苦労するほどの首差しパワー。気性と共に馬体もマイラー色を強めています。毛ヅヤの良さはメンバー随一。腹周りもボリューム満点。皐月賞から中2週のレース間隔でもダメージは全く残っていません。

 馬具を見れば、どんな馬なのかおおよそ見当がつく。チェーンシャンクを着用するほど前進気勢が強くなったジャンタルマンタル。距離短縮でG1の主役へ返り咲くでしょう。そう思わせるマイラー気質とマイラー体形です。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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