【NHKマイルC】シュトラウス 武井師が描く逆襲シナリオ!運動能力間違いなく世代トップ級
2024年5月1日 05:30 春G1シリーズの水曜企画は「G1追Q!探Q!」。担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。3歳マイル王を決する「第29回NHKマイルC」は、東京本社・高木翔平(34)が担当。シュトラウスを送り込む武井亮師(43)に「強気の姿勢」「才能」「メンタル面の強化」の3テーマを問う。
武井師の印象はとにかく“強気”。強力メンバーがそろう一戦でもとことん愛馬を信頼する言葉を並べ、自然と聞き手のテンションも上がってくる。師は「実はそれは意識しているんです。馬は一生懸命走るし、中にはよく分からない中で走っている馬もいる。それでこっちが言い訳していたら、申し訳ない気持ちになるから」と、秘めたポリシーを明かしてくれた。
ギャンブル要素に加え、昨今はスポーツ的な色合いも濃くなっている競馬。人馬のパフォーマンス、レース中の熱い駆け引きを、純粋な競技として楽しんでいる層も多い。「野球やサッカーなどで戦う前から“今回は厳しいです”と言う選手はいませんよね。やっぱりファンの方を盛り上げたいからだと思う。まあそこまでは意識していませんけど(笑い)。あとは(状態が)悪い時に良いとは言わないようにしています」と師。若き指揮官は“言葉”でもレースを盛り上げようと心がけている。
シュトラウスの話になれば、トーンは一気に跳ね上がる。新馬戦で鮮やかな9馬身差Vを飾り、その後もサウジアラビアRCで3着、出世レースの東スポ杯2歳Sを快勝。師は動きの端々から感じる才能にほれ込んでいる。その潜在能力について「運動能力は間違いなく世代トップ級」と、最大級の表現で称賛した。
“世代トップ級”はサービストークではなく、確かな裏付けもある。レコードの激戦となった皐月賞。武井師が送り出したアーバンシックは、勝ち馬ジャスティンミラノから0秒4差の4着に善戦した。師は「アーバンシックを圧倒するような動きをするし、皐月賞を物差しにすれば世代トップ級と言えるんじゃないか。体の使い方、柔らかさ、単純な脚の速さ。ポテンシャルは相当なものがある」と、手放しで称えた。
そんな素質を備えながら、メンタル面の危うさが影響して近2戦で10、9着に大敗。特に2走前・朝日杯FSは大外枠で出遅れ、その後は暴走気味にハナに立って失速した。その失敗を踏襲し、前走・ファルコンSは控える競馬に挑戦。結果的にスペースが見つからず伸び切れなかったが、師は「“直線で外に出さず内に行ってほしい”というのは自分からの指示。スムーズにさばけていれば際どかったと思う。道中の我慢が利いていたし、テーマにしていた“しまいを使う競馬”ができたのは良かったです」と振り返った。
その後も細かい部分を微調整しながらの調整。先月18、24日はともにWコース単走だったが、師は「(18日は)メンタル面を重視した内容。(1週前の)24日は負荷を掛けつつ、折り合いを確認。目的の体を大きく使うという点もクリアできているし、いい方向に向いていると思っている」と前を向く。その才能を生かし切る準備は整いつつある。デビュー3戦で好走した東京に戻るのも歓迎。シュトラウスが指揮官の強気な言葉に背を押され、ビッグタイトルを手にする。
◇武井 亮(たけい・りょう)1980年(昭55)12月25日生まれ、山梨県出身の43歳。二ノ宮敬宇、高木登、和田正道厩舎で厩務員、調教助手を務め、14年に調教師免許を取得。JRA通算2623戦219勝。G1は未勝利だが、昨年ダービーはハーツコンチェルトで3着。
【取材後記】皐月賞の共同会見、振り返れば管理馬アーバンシックについて語る武井師のトーンはやや控えめだった気がする。「(ジョッキーに)あまり強気に言い過ぎないでと言われて(笑い)。レース中の駆け引きもあるので、あまり目立つとマークされたりするらしいんですよね。あ、そういう面もあるんだと学びました」と、笑いながら新たな気づきを教えてくれた。
先月21日の福島は10番人気デアパーディタが激走V。師は「デビューしてから(9戦目で)初めて“今回は良い”と言っていたんです。“武井は何でも勝つと思っている”と思われているかもしれませんが、ちゃんと良い時に良いと言っていますよ」と説明。今回、シュトラウスについては「ここまでの状態、能力は間違いなく良い。後はレースで能力を発揮できるかだけです」と結んだ。 (高木 翔平)