【日本ダービー】レガレイラの挑戦!サンデーレーシング・吉田俊介代表の信念「この馬は強い」
2024年5月22日 05:30 ダービー週の水曜も出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る「G1追Q!探Q!」。東京本社の高木翔平(34)が、牝馬レガレイラで「第91回ダービー」制覇を目指すサンデーレーシングの吉田俊介代表(50)を直撃した。
牝馬による皐月賞→ダービーの連続出走は、グレード制が導入された84年以降で初。牡馬クラシックの一次登録からレガレイラでの2冠獲りを見据えた経緯について、吉田俊介氏は「函館の初戦が本当にいい内容で強かったです。そして距離はあった方がいいタイプだと思っていました。その後、ホープフルSを勝って期待通りの能力の高さを見せてくれたので、その時点で皐月賞、結果が良ければダービーと思っていました」と振り返った。1週前には同じ東京芝2400メートルで牝馬の頂点を決するオークスが行われたが、あえて屈強な牡馬相手に挑戦。同氏は「今までトライしたことがないので、凄く迷いました。1週多く回復できるというのもあったし、何よりこの馬は強いと思っていて、当初からダービーに行くという計画を立てていたので“その通りにしましょうか”というのが大きいですね」と説明した。
近年で急激に牝馬のレベルは向上。同じサンデーレーシング所属のクロノジェネシスが宝塚記念&有馬記念のダブルグランプリを制した20年は、古馬の牡牝混合芝G1・10戦中、牝馬が9勝を挙げた。「やっぱり牡馬の方がデビューまでの調教はやりやすいんですよね。筋肉も付いてくるし、デビューする前の放牧地でも全然運動量が違いますから。それでも最近は牝馬が牡馬混合のレースを勝ったりしますよね。トレーニングは今も難しい面はあるんですけど、そこをうまくできる調教だったり、普段の調整の技術が進歩しているからだと思います」。成功も失敗も糧に、蓄積された膨大なノウハウが結果につながっている。
また、同氏が副代表を務めるノーザンファームは、古くから海外の繁殖牝馬を積極的に輸入。連綿と受け継がれる優秀な牝系も活躍の大きな要因だ。「ウインドインハーヘアを買ってきて、ブラックタイド、ディープインパクトと生まれてくれた。今年になって(同じ牝系の)レガレイラとステレンボッシュ(桜花賞V、オークス2着)、アーバンシック(ダービー出走)が、おばあちゃんのランズエッジ(ウインドインハーヘアの娘でサンデーレーシング所属)が一緒。同じ年に走るのも凄く不思議なものを感じますよね」と笑顔。33歳のウインドインハーヘアは現在、ノーザンホースパークで余生を過ごしている。「まだ元気にしていて、つい拝みに行っちゃいますよね。ウインドインハーヘア詣でに(笑い)。元気に日なたぼっこしていますよ。繁殖を引退して十何年たつけど幸せなんでしょうね」と目を細めた。
1番人気を背負った皐月賞は本来の末脚を繰り出せず6着に敗戦。1冠目について、同氏は「スタートでぶつかっちゃって、位置取りが悪くなってしまいました。(馬場的に)絶対前め、内めにいないといけない日だったと思うんですけど、スタートで外、内と2、3回ぶつかって、1コーナーでもう1回ぶつかって。厳しいなという感じでした。相当タフなレースで凄く時計の出る馬場になっていましたからね。前が止まらない馬場でした」と敗因を分析する。
今回は広い東京コース、前回より切れ味が問われる展開にもなるはず。「前半でせかしていかない方がいいという面で、距離は長い方がいいのかなと思います。それは最初から思っていたので1800メートル以上の距離を使ってきました。皐月賞も上がり3F(33秒9)は最速(タイ)でしたし、最後の素晴らしい脚は持っている。そこをうまく生かせるような競馬が理想です」と期待を込めた。
◇吉田 俊介(よしだ・しゅんすけ)1974年(昭49)4月13日生まれ、北海道出身の50歳。慶大卒。98年ノーザンファーム入社。同ファーム空港牧場場長を経て、現在は同ファーム副代表。サンデーレーシングの代表取締役も兼務する。父はノーザンファーム代表の吉田勝己氏。趣味は乗馬。
【取材後記】取材中、どうしても同じサンデーレーシング所属で昨年の3冠牝馬リバティアイランドとの比較を求めてしまった。昨年リバティもダービー挑戦プランがあったが、当時はまだ距離適性に不透明なところがあったため牝馬限定のオークスに向かった。吉田俊介氏は「リバティアイランドの方が完成は早かったですが、まずは3冠を獲ってから(牡馬路線に)行きましょうということになった」と当時を回顧。距離延長という面に関しては今年の方が自信があるからこそ、牡馬相手のダービーでもやれるという手応えがあるのだろう。
レガレイラは先日、今年の凱旋門賞にも登録。挑戦するかどうかはあくまでダービーの結果次第となるが、日本馬の悲願成就へ期待は大きい。「ずいぶん前から選択肢の一部としてありました。適性がなさそうな馬は登録しないので、ヨーロッパの力の要る馬場にも適性を感じますね」と同氏。伝わってくるのは無限の可能性への期待感。百戦錬磨のサンデーレーシングが、そのポテンシャルにほれ込んでいる。