佐々木師も期待 キズナ産駒の父子3代ダービー制覇
2024年5月23日 10:15 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(47)が担当する。今年のダービーは、キズナ産駒が5頭出しでスポットライトを浴びる。そのキズナを管理して13年のダービーを制した佐々木晶三師(68)に改めて大一番を振り返ってもらった。
11年前の日本ダービー。佐々木師=写真=は直線で地鳴りのように響き渡る大歓声を楽しんでいた。管理するキズナが第80代ダービー馬の称号を手にした。「大一番を迎えてもずっとワクワクしていた。楽しくてしようがない日々を過ごしていたよ。普通の馬なら何か不安があるものだけど、キズナは世代の中で能力が抜けていたからね。負けるイメージが全く湧かなかった。直線で外から豪快に伸びてきた時は、本当にうれしかった」と当時を懐かしむ。
佐々木厩舎としては初のダービー制覇。それ以上に騎乗した武豊の勝利を喜んだ。「ユタカちゃんにとっても特別で大きな勝利だったと思う」。10年3月の毎日杯で落馬負傷。成績が低迷していた名手のカムバックV。5度目のダービー勝利を心から祝福していた。
自身が管理するキズナ産駒ではウエストナウが4日の京都新聞杯で2着に入ったが、レース中の斜行で調教再審査の制裁を受けた。ダービー出走は届かなかった。「キャリアが浅くて、(スタートをして)先頭に立った瞬間に嫌だなと思った」と振り返る。それでも態勢を整えて連対を果たした。「あれで2着に頑張ってくれた。改めて能力の高さを感じたよ。放牧で力をつけてくると思うし、秋が凄く楽しみ」と成長して復帰する日を心待ちにする。
今年のダービーには皐月賞馬ジャスティンミラノを筆頭にキズナ産駒5頭が顔をそろえる。キズナの父はディープインパクト。史上初の父子3代ダービー制覇が懸かる。「まずは無事に走り切ってほしいね。僕が当時に味わったワクワク感を管理する調教師には感じ取ってもらえれば。ディープインパクト、キズナと続く父子3代ダービー制覇の偉業を達成してほしいね」と陣営にエールを送った。
◇佐々木 晶三(ささき・しょうぞう)1956年(昭31)1月15日生まれ、山口県出身の68歳。74年に栗東・中村武志厩舎で騎手デビュー。79年桜花賞をホースメンテスコでG1初制覇。83年騎手引退後は調教助手。94年に調教師免許取得、同年11月に初出走。03年ジャパンCをタップダンスシチーで調教師としてJRA・G1初制覇。JRA通算7197戦646勝。重賞は51勝でG17勝(J・G1含む)。
◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日生まれ、大阪府出身の47歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に中央競馬にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。現在、グリーンチャンネル「中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当。思い出のダービーはスペシャルウィークが制した98年。