【安田記念】シャム師&マクドナルド騎手が明かす!香港最強馬ロマンチックウォリアーの野望

2024年5月29日 05:00

<安田記念>会見後、笑顔でポーズを決めるシャム師(右)とマクドナルド(撮影・村上 大輔)

 春G1シリーズの水曜企画は担当記者が聞きたかった質問を出走馬の陣営にぶつけて勝算を探る「G1追Q!探Q!」。マイル王決定戦「第74回安田記念」はベテラン梅崎晴光(61)が担当する。今年は香港からG1・7勝馬ロマンチックウォリアーが参戦。28日に東京競馬場で最終追い切りを敢行。管理するチャップシン・シャム師(63)と主戦騎手のジェームズ・マクドナルド(32)に「適性&体調」「強さの秘密」「来日の狙い」を聞いた。

 中国語で「浪漫勇士」(ロマンチックウォリアー)と命名された香港最強馬の金看板に誇張はなかった。530キロを超える鹿毛の巨体が東京競馬場の芝コースで弾む。帯同馬ロマンチックチャームの2馬身後方を追走。4角をブレなく回ると、香港の象徴の一つ「ライオンロック」(獅子の頭の形をした岩)のような前後肢の筋肉が激しく収縮する。おわん形の大きな蹄が芝丈12センチほどに刈り込まれた高速ターフをつかんだ。馬体を並べてゴール後も芝の感触を楽しむように1角までフットワークを伸ばした。

 手綱を取った主戦マクドナルドは「ベリーベリーグッド!(ぬかるんだ馬場より)硬い馬場の方が合う。高速馬場への適性?十分あると思います」。管理するシャム師も「私は雨でも心配ないと思っている。コックスプレート(オーストラリアG1=昨年10月V)の走りから左回りにも自信がある」と満足そうな顔で言葉を継いだ。

 前走(クイーンエリザベス2世C優勝)から中4週でも体調は維持しているのか。「前走後もエネルギーがあり余っていたんだ。回復は非常に早かった」とシャム師。マクドナルドも「疲れは全くないし、とても落ち着いている。ここまでいい状態になるとは…」と万全を強調した。

 ロマンチックウォリアーは前走クイーンエリザベス2世Cで香港馬初の3連覇を達成、G1連勝を4に伸ばすとともに通算ではG1・7勝目を挙げた。4連勝の手綱を取ったマクドナルドは「勝ちたい気持ちが非常に強い馬。ボディーとともにハートも大きく、ラストの闘争心が物凄い。勝ちたい気持ちに応えられる持続的なスピードも持っている」と語る。

 前走は自国では初の道悪(やや重)に脚を取られながらも、日本馬プログノーシスを首差ねじ伏せた。レース後、鞍上は「道中の走りには満足していなかったが、残り600メートルから持ち直した。追ってから本当にしぶとい。いつもこの馬の走りには感動させられる」と大興奮。馬名通りの“勇士”の走りだ。

 マイル戦は昨年1月の香港G1スチュワーズC(2着)以来9戦ぶり。「距離も問題ない。適応能力にも優れているのでどんなペースでもレースできる」と揺るぎない信頼を寄せる。

 ロマンチックウォリアーは宝塚記念(6月23日、京都)にも登録済みだが、最大目標はあくまで安田記念。シャム師は「宝塚の出否は安田次第。安田でいい走りをして余力があった場合に相談したい」と語る。出走馬についても研究済み。14年ワールドスーパージョッキーズシリーズ以来の来日となったマクドナルドは「日本馬のレベルの高さは知っている。特にソウルラッシュは強敵だ」とライバルに指名した。

 シャム師にとっては24年ぶりの安田記念。00年Vフェアリーキングプローンの攻馬手を務めた。「当時は東京入りする前に競馬学校(千葉県白井市)で検疫を受けさせられたが、今は直接東京入りできる。調整しやすくなった」と語る。馬主のパッファイ・ラウ氏は日本製品も扱うホームセンター「日本城」の創業者。「いつか日本で所有馬を走らせたい」との夢が実現した。異国の地でのG1・5連勝に万全の態勢。シャム師は「今回もいいパフォーマンスをお見せしたい」と力強く締めくくった。

 ◇ジェームズ・マクドナルド 1992年1月6日生まれ、ニュージーランド北島出身の32歳。父ブレットは障害騎手として活躍。07~08年シーズンにデビュー。いきなりG1(NZブリーダーズS)を制し、90勝を挙げて見習騎手リーディング。10~11年には207勝を挙げ同国のシーズン最多勝記録を更新。12~13年から拠点をオーストラリアのシドニー地区に移し、昨シーズンまでに通算7度のリーディングを獲得。香港、英国でも活躍し22年にはロンジンワールドベストジョッキーを受賞。G1通算90勝を誇る。

 ◇チャップシン・シャム(中国名・沈集成)1960年6月27日生まれの63歳。77~83年まで香港で騎手。引退後はアイヴァン・アラン厩舎の調教助手として経験を積み、00年安田記念Vフェアリーキングプローンなどを担当。03~04年シーズンから調教師となり、通算800勝以上をマーク。海外G1はロマンチックウォリアーの23年コックスプレート(オーストラリア)、リトルブリッジのキングズスタンドS(英国)の2勝。今年3月の高松宮記念ではビクターザウィナーが3着に健闘した。

 【取材後記】香港最強馬のボディーは馬体診断でおなじみの“達眼先生”も絶賛した。追い切り直後の画像を目にした鈴木康弘元調教師は「首が太くて、全身に凄いボリューム。マイラーを思わせる筋肉の付き方だが、背や腹下には中距離馬の長さもある。オールマイティーな体形です」とコメント。「馬体診断(28日付)ではソウルラッシュとナミュールに100点をつけたが、ロマンチックウォリアーには120点がふさわしい」。満点超えの馬体採点を取材後記としてお届けしておく。

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