【スプリンターズS】伏兵ルガルが新スプリント王! 7年目・西村淳は涙のG1初制覇

2024年9月30日 05:28

<中山11R・スプリンターズS>G1初勝利を挙げたルガル(左から2頭目)(撮影・村上 大輔)

 秋のG1シリーズ開幕戦「第58回スプリンターズS」が29日、中山競馬場で行われ、9番人気の伏兵ルガルがゴール前の接戦を制しG1初制覇。春の高松宮記念で1番人気10着に敗れた雪辱を果たした。鞍上の西村淳也(25)はデビュー7年目、24度目の挑戦でうれしいG1初制覇。2着に5番人気トウシンマカオ、3着に4番人気ナムラクレアが入り、3連単は29万円超と波乱の決着になった。

 苦難を乗り越えた先の格別な勝利。「ゴールの直後は感情が出た。込み上げてくるものがあった。レースのことは何も覚えていない」。ルガルが先頭でゴールを駆け抜けると、鞍上の西村淳はステッキを持ち替えた手で涙を拭う。相棒の首筋に顔を埋めて、喜びをかみしめた。

 1~4着が首差で並ぶ大接戦。好位3番手から直線坂上で先頭に躍り出ると、外トウシンマカオの猛追を振り切った。春の高松宮記念ではG1初挑戦ながら1番人気に支持された。結果は10着惨敗。レース後には左前脚の骨折が判明。半年近い休養を経ての復帰初戦で、人馬共に見事なリベンジを果たした。

 デビュー7年目の西村淳にとっても、うれしいG1初制覇。母子家庭に育った鞍上は、どんな時も背中を押してくれた母への感謝を口にした。「大変なことがいっぱいあったと思う。そんな中でも小学5年生から乗馬を習わせてくれた」。そんな母はこれまで一度も競馬場に来たことがなく、西村淳も「生では見てほしくない(笑い)」と照れた表情。それでも「勝った時には“かっこよかったよー”と連絡をくれる。今日は泣いているでしょうね」と最愛の母を思いやった。

 先にジョッキーを目指したのは兄の勇哉さん。夢はかなわず現在は浜田厩舎で調教助手を務める。「兄がジョッキーになれなかった分も、努力を重ねることができた」。18年に念願の騎手デビューを果たすと、着実にステップアップ。昨年はキャリアハイとなる76勝をマークした。24度目の挑戦で晴れてG1ジョッキーの仲間入り。「これからも全力で、ひとつでも多く乗って勝ち星を取れるジョッキーになりたい」。貪欲な姿勢はデビューした当初から変わらない。

 ルガルにとっても骨折を乗り越え、並み居る強敵を退け手にした価値あるタイトル。杉山晴師は「春先のシルクロードSから馬体が成長期に入ってピークを迎えつつある」と目を細める。今後については「海外も含めて馬の状態を見てオーナーさんと相談して時間をかけて判断していきたい」と力を込めた。

 混迷が続くスプリント路線に出現した4歳の新星。諦めず苦難を乗り越えて夢をつかんだルガルと西村淳。「(お立ち台は)凄く気持ちいい。またG1を勝って、この台に立ちたい」。鞍上は晴れ晴れとした表情で誓った。

 ◆ルガル 父ドゥラメンテ 母アタブ(母の父ニューアプローチ)20年3月7日生まれ 牡4歳 栗東・杉山晴厩舎所属 馬主・江馬由将氏 生産者・北海道浦河町の三嶋牧場 戦績13戦4勝(重賞2勝目) 総獲得賞金2億9486万円 馬名の由来は王(シュメール語)。

 ◇西村 淳也(にしむら・あつや)1999年(平11)7月30日生まれ、兵庫県尼崎市出身の25歳。栗東・田所秀厩舎所属で18年3月にデビューし、同31日に阪神6R(ティーブラッサム)で初勝利。21年金鯱賞(ギベオン)で重賞初制覇。兄・勇哉氏は栗東・浜田厩舎の調教助手。JRA通算4512戦385勝、うち重賞9勝。1メートル60、46キロ。

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