【追憶の毎日王冠】89年オグリキャップ 少数精鋭の名勝負「芦毛の怪物」の根性にライバル騎手は脱帽

2024年10月2日 06:45

89年の毎日王冠、1着はオグリキャップ、右は2着のイナリワン

 カツラギエース、サクラユタカオー、ダイナアクトレス、サイレンススズカ、グラスワンダー、エイシンプレストン、ダイワメジャー…。過去の優勝馬名を挙げるだけでワクワクする。それが毎日王冠だ。

 少頭数、でもハイレベル。そういう“矛盾”が起こる一戦でもある。サイレンススズカ、グラスワンダー、エルコンドルパサーがそろい踏みして、サイレンススズカが勝った98年が代表的だ。

 しかし、古参記者としては、この一戦を推したい。89年、8頭立ての毎日王冠だ。

 メンバーは相当に濃かった。1番人気はオグリキャップ。問答無用のスーパーホース。前年の有馬記念を3歳にして制覇。けいじん帯炎明けのオールカマーを快勝し、万全の状態だった。

 2番人気はメジロアルダン。3冠牝馬メジロラモーヌの弟として注目を浴び、ダービーはサクラチヨノオーの2着。1年の休養を経てメイS、高松宮杯(当時G2、2000メートル)を快勝し、G1制覇に向けていよいよ本格化かと期待された。

 3番人気はイナリワン。5歳にして地方競馬から移籍し、春は武豊を背に天皇賞・春、宝塚記念を連勝。ここがオグリキャップとの初の顔合わせとなった。武豊は同日の京都で行われる京都大賞典でスーパークリークに騎乗するため柴田政人に乗り代わった。

 4番人気グランドキャニオンも強豪だった。長期休養を挟んで4連勝。函館記念2着からここに臨んだ。常に好位を取る安定した競馬で崩れないタイプだった。

 8頭立て。だが、見どころ満載。いかにも毎日王冠という一戦のゲートが開いた。

 平均的なペースで流れ、直線を向く。岡部幸雄・メジロアルダンの手応えが絶好だ。前を行く2頭の手応えを見ながら追い出しのタイミングをうかがう。外からイナリワンとオグリキャップが迫った。

 残り100メートル。ゴーサインを受けたメジロアルダンが先頭に立つ。だがイナリワンが来た。残り50で先頭。普通はイナリワンが勝つ競馬だ。しかし、外からオグリがグッと首を伸ばす。鼻差、オグリキャップが先着していた。

 2着に敗れたイナリワン・柴田政人はオグリキャップの勝負根性を称えた。「こちらが突き抜けるかと思った。それほどの手応えだったのに。(オグリは)凄い馬だよ」。オグリキャップ・南井克巳も激戦の余韻に浸った。「ほんま、ゴール前は凄かったよ…」

 その後、南井騎手はこう語った。「京都大賞典ではスーパークリークが復活したんだって?イナリワンもメジロアルダンも、ここから良くなるだろうしね」。秋のG1戦線がし烈なものとなることを予言した。

 ここからオグリキャップは天皇賞・秋2着、マイルCS1着、連闘のジャパンC2着、有馬記念5着。伝説のG1ロードが始まろうとしていた。

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