【秋華賞】チェルヴィニア95点 ひと夏で“大人の階段”2段跳び 心身ともに成長実感
2024年10月8日 05:30 ボディーも2強!鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第29回秋華賞(13日、京都)は桜花賞馬ステレンボッシュとともにオークス馬チェルヴィニアをトップ採点とした。中でも達眼が捉えたのはオークス馬の3歳夏を越しての飛躍的な成長だ。
少女はひと夏で大人への階段を2段跳びすることがあります。例えば、ジブリ作品のヒロインたち。「となりのトトロ」のサツキとメイ。「千と千尋の神隠し」の千尋、「思い出のマーニー」の杏奈…。いずれもひと夏の少女の成長を切り取った珠玉の名作です。ターフのドラマに置き換えれば、オークスでヒロインを務めたチェルヴィニア。秋華賞で牝馬2冠に挑む姿はひと夏の少女の成長を切り取った珠玉の名画のようです。
オークス時は美しさを備えている半面、鍛える余地を残していると指摘しました。それから4カ月半余、夏の放牧を終えて美浦トレセンに戻ってきた姿にはたくましさも備わっています。放牧先のノーザンファーム天栄(福島県)でも鍛えられたのでしょう。今春より盛り上がったトモ。特に臀部(でんぶ)の筋肉に厚みが増した。殿筋は推進力を生み出すために最も重要な筋肉です。その最重要部位がパワーアップした。
身心一如。体と心は一体との言葉通り、馬体の飛躍的な成長に合わせて気性も大人になったのでしょう。オークス時の幼かった顔がりりしくなりました。「思い出のマーニー」のヒロイン杏奈の風になびくロングヘアみたいに尾先を涼しげに流しながら、目、耳、鼻先は正面の一点に集中しています。大人びた顔つきです。
休み明けとあって腹周りには少し余裕がありますが、美浦トレセン→京都競馬場の長距離輸送が控えているのでこれでいい。毛ヅヤも良好です。
脚長、飛節の角度は浅め、背中から尻にかけてのつくりには余裕がある。典型的な中長距離仕様です。速い脚を持続できる半面、一瞬の加速力に欠ける体形。東京2400メートルのオークスよりも忙しい競馬になる京都内回り2000メートル戦は体形から向いているとは言えません。コース適性に限れば、桜花賞馬ステレンボッシュに軍配が上がる。それでも、飛躍的な成長力なら…。チェルヴィニアはひと夏で大人への階段を2段跳びしました。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。