【フェブラリーS】エンペラーワケア100点!皇帝の後肢、腹周り引き締まっている

2025年2月18日 05:30

エンペラーワケア

 満月形のトモ(後肢)で砂のエンペラー襲名だ。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。今年最初のG1「第42回フェブラリーS」(23日、東京)ではエンペラーワケアに唯一の満点を付けた。達眼が捉えたのは、筋肉の膨らみで満月のように丸みを帯びたトモ。G1初出走でダート界の頂点に駆け上がる勢いだ。

 天に二日なし、土に二王なしといいます。天に太陽が2つもないように、地上に王(エンペラー)が2人も存在することはあり得ないとの意味。エンペラーワケアの馬体から伝わってくるのも国内に2頭といないダート王の迫力です。

 太い首、大きくて幅のあるキ甲、胸前の分厚い筋肉、肩から上腕にかけての強大な筋肉…ここまではダートの一流馬によく見られる特長。ライバルと一線を画しているのは後肢のつくりです。大半のダート馬はたくましい前肢に比べて後肢が寂しく見える“前肢の勝った体形”ですが、エンペラーワケアは後肢も凄い。尾の付け根から臀部(でんぶ)にかけて強い筋肉で盛り上がっています。筋肉が満ちて、トモ全体が満月のように丸く映る。

 馬名の「ワケア」とはハワイの創世伝説に登場する天空をつかさどる神。ワケアの妻ヒナは月の女神だとか。名は体を表すの格言通り、馬のワケアのトモは天空に浮かぶ満月のシルエットになったのか。与太話はともかく、前後肢のバランスが完璧に整った2頭とない馬体です。

 3カ月半の休養明け。腹周りは久々とは思えないほど引き締まっている。休養中も鍛え込まれてきたのでしょう。筋肉が増えて満月形になったトモと締まった腹がメリハリのあるボディーラインをつくっています。

 背と腰のつくりには遊びがなく、腹下が短め。中長距離には向かないが、マイルまでは対応できる骨格です。スネの細さはスネとつながる飛節の絶妙な角度でカバーしています。厳寒期とあって首と腹に冬毛がのぞいていますが、毛ヅヤ自体は悪くない。
 武蔵野Sでは直線、前が壁になりながら馬群をこじ開けてストライドを伸ばした。その勝負根性は立ち姿からもうかがえます。鋭い目つき、両耳を前方にそろえて集中しながら、力を入れてハミをかんでいる。負けず嫌いな性格なのでしょう。砂に二王なし(砂のエンペラーは俺1人だ)とでも言いたそうな顔つき。姿勢を見ると、左後肢の蹄が浮くほど両前肢に負重をかけて立っています。前進気勢が強いのでしょう。

 2つとない砂の王座へ押し上げるのは満月のようなトモと強い気性。天に二月なし、砂に二王なしです。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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