【神戸新聞杯】“ヘヴンリー一族”手がけた丸内助手が大物デルアヴァー導く
2025年9月17日 05:26 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社・坂田高浩(40)が担当する。神戸新聞杯に出走予定のデルアヴァーを担当する丸内永舟助手(48)を取材。秋初戦を迎えての成長度をはじめ、祖母ヘヴンリーロマンスや母アムールブリエにも携わった世話役だからこそ分かる一族の共通点や思い入れを聞いた。
出走馬の大半が休み明けとなる神戸新聞杯。5月の京都新聞杯3着以来となるデルアヴァーも成長の階段をしっかり上っている。担当の丸内助手は「子供っぽさが抜けてきました。以前は顔つきもお子ちゃまだったんですけどね」と馬房で優しい表情を向けた。
天皇賞・秋を制した祖母ヘヴンリーロマンス、重賞6勝の母アムールブリエなど一族を手がけてきた腕利き。デルアヴァーについては「デビュー前からこの一族で一番いいなと思いました。スケールの大きな馬。奥手の血統で凄いものを秘めています」と素材にほれ込む。この母系の共通点については「ヘヴンリーの子は自分をちゃんと持っていて勝ち気な部分が似ています」としつつ「気難しいところもあり、アウォーディー(伯父、16年JBCクラシック覇者)やラニ(叔父、16年UAEダービーV)も反発する時はとことん反発します」と振り返った。
「その点(母の)アムールは性格がまだ穏やかで牝馬の中でも骨格が素晴らしかったです。一番の繁殖牝馬になるだろうと思っていてデルアヴァーが出てきてくれました。この一族はお母さんが色濃く出ている気がします」と目を細めた。
ダートでの活躍馬も多い母系において、デルアヴァーはデビューから芝でキャリアを積んできた。「調教でも反応がいいですし、他の子と比べても胴が短め」と適性を見極める。京都新聞杯3着後はダービーに向かわず、ラジオNIKKEI賞を視野に入れていたものの「蹄を痛がっていたのもあり無理せず。いい夏休みになったと思います」と秋に切り替えた。晩成傾向が強い母系だけに、ここからの飛躍に期待が高まる。
ヘヴンリーロマンスとの出合いから始まった丸内助手の一族との関わり。「宝物ですね。あれだけの馬を経験させていただいて本当にありがたいです」と感謝する。天覧競馬だった05年天皇賞・秋を14番人気で制し、鞍上・松永幹夫(現調教師)が馬上から最敬礼したシーンは多くのファンの胸に刻まれている。「何とかG1を勝ちたいという思いでやってきた中で、こういう広がり方をするんだなって。世界が変わった感じがして、それに対して何か返していきたいと思いました」とうなずいた。
担当馬の産駒にはそれぞれ面影がある。「安心するし懐かしい。お母さんといるのは離乳する時までだと思うので、(馬に)言うんですよね。お母さんを知っているか?って。現役時の数年、自分の方が長く一緒にいたので」と頬を緩めた。「(デルアヴァーの)顔つきはアウォーディーに似ています。(若葉S4着時に騎乗した武)豊さんもそう言っていました」。一族の特徴と照らし合わせながら、絶妙なサジ加減で素質開花に導いていく。
◇丸内 永舟(まるうち・えいしゅう)1977年(昭52)8月8日生まれ、愛知県出身の48歳。滋賀県の湖南牧場での勤務をへて、01年から栗東・山本正司厩舎で調教助手を務める。07年3月から現在の松永幹夫厩舎へ。X(旧ツイッター)でも競馬ファンにおなじみ。ヘヴンリーロマンスの一族の他にもG1・4勝馬ラッキーライラックなど多くの名馬に携わってきた。
◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の40歳。07年入社で09年4月~16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、22年10月から再び競馬担当に。