【スプリンターズS】三浦皇成 127回目の挑戦G1初制覇に涙 8歳ウインカーネリアンで悲願

2025年9月29日 05:30

<中山11R・スプリンターズS>ウインカーネリアンでレースを制した三浦は内田と抱き合う(撮影・河野 光希)

 秋のG1シリーズ開幕戦「第59回スプリンターズS」が28日、中山競馬場で行われた。三浦皇成(35)騎乗の11番人気ウインカーネリアンが2番手から抜け出してG1初制覇。デビュー18年目の三浦は127回目のJRA・G1挑戦で悲願の初Vを飾った。8歳馬のJRA平地G1勝利は18年JBCスプリントのグレイスフルリープ以来5頭目。3連単は130万円超と大波乱の決着となった。

 18年分のやったあ。激戦の後のウイナーズサークル。三浦はウインカーネリアンの馬上で右拳を突き上げた。「先生、やったあ」と鹿戸師と視線を交わし、「任せてくれてありがとうございます」と馬主のウイン岡田義広代表と抱擁した。中山競馬場約3万人の観衆から三浦コールで祝福され、ゴーグルの奥の瞳はうっすら光った。

 試練の大外枠からのスタートとなった。三浦は意外にも「最高だと思っていた」と言う。「ゲート2歩目からの反応は世界トップレベルのスピード。逆に包まれたくなかったので、いつもは余計に出していた。行く馬を見ながら抱えて行けた」。ゲートを出ると、逃走態勢を築いたジューンブレアの番手を確保してリズム良く運んだ。

 前半3F33秒7と昨年の超ハイペースとは打って変わって落ち着いた流れ。前有利の展開で直線を迎え、ジューンブレアとの一騎打ち。内には名手武豊。中山名物の急坂を上ってもまだ併走状態だった。どっちだ。カーネリアンだ。頭差競り勝った。自厩舎の8歳馬とは全32戦中24戦でコンビを組んだ「苦楽を共にした相棒」。ヒーローは「カーネリアン、頼む。追いながらこの馬とのいろんなことが頭に浮かんできた。意地でもここは勝たせてあげたいとそれだけで追った」と振り返った。

 08年のデビューから長い道のりだった。ルーキーイヤー91勝で武豊の新人最多勝記録を更新。“天才ジョッキー”として頭角を現したが、G1はここまで126連敗となかなか勝てなかった。「この世界から僕は必要ないんじゃないか」と打ちひしがれたこともあった。「諦めずに頑張っていれば、これだけの声援に応えることができた。騎手をやって一番幸せな時間」。ファンや関係者、そして、11年に結婚したタレントのほしのあき(48、写真)をはじめ家族への感謝の気持ちでいっぱいだった。

 師匠の鹿戸師は「ずっと三浦とコンビを組んでG1には手が届きそうでなかなか届かなかった。こういう大きいレースで勝たせてもらってありがたい。(管理した)スクリーンヒーローの子供でG1を勝てるのは調教師冥利(みょうり)に尽きる」としみじみ。「年齢のこともあり回復に時間がかかるけど、オーナーと相談しながらゆっくり考えていきたい」と今後の見通しを語った。

 コンビは続くよどこまでも。三浦は「ファンの方がもっともっと競馬を好きになっていただけるように、騎手として頑張っていければ」。G1ジョッキーとして、さらなる活躍を誓った。

 ≪衝撃デビューから18年目ついに≫天才現る。鮮烈なルーキーイヤーだった。三浦は08年3月1日、中山1R(モエレロングラン6着)でデビュー。同日10Rのフェニコーンで初勝利を挙げた。その後も着実に白星を積み重ねる。8月の函館2歳Sをフィフスペトルで勝利、デビュー5カ月で早くも重賞を勝った。勢いはとどまるところを知らない。9月の札幌では新人最多となる騎乗機会8連続連対を達成。10月のスプリンターズS(プレミアムボックス14着)でG1初騎乗も果たした。

 そんな若武者の登場に、世間は“怪物”“武豊の再来”と沸き上がった。10月25日、福島1Rをアドバンスヘイローで制してデビューから70勝目をマーク。武豊が持つ新人最多勝利記録を21年ぶりに更新した。最終的には全国リーディング9位の91勝を積み上げた。

 ◆ウインカーネリアン 父スクリーンヒーロー 母コスモクリスタル(母の父マイネルラヴ)17年4月16日生まれ 牡8歳 美浦・鹿戸厩舎所属 馬主・ウイン 生産者・北海道新冠町のコスモヴューファーム 戦績33戦9勝(重賞3勝目) 総獲得賞金5億1973万6500円 馬名の由来は冠名+宝石名。

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