【凱旋門賞】北村友一 クロワデュノールと頂点目指す「自分が乗るなんて思ってもいなかった」

2025年9月29日 05:30

クロワデュノールで日本ダービーを制した北村友

 さあ、凱旋門賞ウイーク!フランス伝統の一戦「第104回凱旋門賞」が6日後に迫った。今年は日本調教馬が3頭参戦。共にステップレースを勝って意気揚々と駒を進める。注目は今年のダービー馬クロワデュノール。デビューからずっとコンビを組む北村友一(38)に意気込みを聞いた。

 21年5月、落馬事故で背骨を8本折る重傷を負った北村友。同年の10月3日、35歳の誕生日は過酷なリハビリの真っただ中にあった。リフレッシュを兼ねて訪れた沖縄のホテルで見届けたのは、遠く離れたフランスでクロノジェネシスが奮闘した凱旋門賞。「一ファンとして応援していました。(療養期間が長く)もしかして間に合うかも…ということもなかったので、ケガした3日後にはもう気持ちは切り替えられていました」。デビューから14戦連続で手綱を取った“相棒”の健闘を祈ったが、マーフィーを背に7着に敗れた。

 あれから4年。「いつか自分が乗るなんて思ってもいなかった」という凱旋門賞に日本ダービー馬と挑む。巡り合った新たなパートナーは、クロノと同じ斉藤崇厩舎のクロワデュノール。14日にパリロンシャン競馬場で行われたプランスドランジュ賞を制した。「実際に自分で見て体感して雰囲気がある、凄くいい競馬場だなと。ここで日本ダービー馬に乗れることは本当に光栄だと感じました」。日の丸の重責を背負う戦いを「やっぱり、いいものですね」と充実の表情で振り返る。

 その前走の臨戦過程は順風満帆ではなかった。クロワは戦績が示す通りの叩き良化型で「いつも使ってから良くなるので想定内でしたが、“もっと良くなる、もっと走れる”という感じでした」。コンディションは発展途上。加えて海外初遠征の影響もあった。調教拠点とするシャンティイ競馬場は自然豊かで、サラブレッドにとっては最高の環境。ゆえに「国内にいる時より少しボケーッとしていて、環境が穏やかな分、スイッチが入らなかった面もあった」と分析する。

 本番と同じ競馬場で上積みを残しながら得た勝利が北村友の自信を深めた。課題と捉えていた激しい起伏や、最後の直線前に現れるフォルスストレート(偽の直線)での折り合いも一発クリア。「コースはトリッキーですが競馬場自体は凄く広い。馬によっては難しいでしょうけど、乗りやすさを生かせればプラスに働く馬もいるはず」。操縦性に秀でたクロワこそがそうだと言い切る。

 難攻不落の凱旋門。日本馬は1969年スピードシンボリから延べ35頭が挑戦し、2着4回と勝てていない。その中には延べ8頭の日本ダービー馬も含まれるが、新時代のエースが苦闘の歴史に終止符を打つ。騎手生命を脅かすほどの落馬事故からカムバックしたダービージョッキーは「馬のいいところを見せられるよう、悔いのないように調整したい。凱旋門賞を勝てるよう、一生懸命に、丁寧に」と悲願成就を待ちわびるファンに約束する。強気のエスコートで頂点に立ったダービーのように、相棒クロワデュノールの輝きを信じ抜き、歴史に名を刻む。

 ≪アロヒアリイ田中博師とは同期≫日本から参戦の3歳馬アロヒアリイを管理する田中博師と北村友は競馬学校の同期。世界一を競うレースでライバルとなることに鞍上は「本当にうれしい。お互いに挑戦できることには特別な思いがあります」としみじみ語る。騎手、調教師と立場は変わっても親交は深く、「話していて凄く面白いし勉強になる。競馬を深く考えているので、同期としてというよりホースマンとして尊敬しています」と思いを明かした。

 ≪北村友 早くも現地へ≫北村友は22日に一足早く現地へ向かった。27日は中央競馬で騎乗可能だが、「(追い切りに)全部乗るつもりで」と一時帰国せず、クロワデュノールの調整に専念する。フランスまではフライトに12時間を要し、時差も7時間ある。前哨戦のプランスドランジュ賞では自身も体内リズムの適応に苦慮しただけに「2週間、滞在すれば大丈夫でしょう」と笑顔。30日には現地シャンティイ競馬場の5Rハンデキャップ戦に騎乗予定で、大一番へ向けて経験を積んでいく。

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