【NHKマイルC】斎藤誠師 ジーネキングと息子とつかむ夢 「使って育てる」マイルで開花
2026年5月6日 05:30 水曜企画「G1追Q!探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。3歳の芝マイル王を決める「第31回NHKマイルC」は東京本社・鳥谷越明(56)が担当する。ジーネキングを送り出す斎藤誠師(55)は当レース7度目の挑戦で、最高成績は11年プレイと13年ガイヤースヴェルトの5着。息子の斎藤新(25)とのタッグで初制覇を狙う。「父子重賞初V」「日高の夢」「厩舎の流儀」の3項目を聞いた。
【父子重賞初V】3着でNHKマイルCの出走権を手に入れた前走のニュージーランドTは横山和が騎乗したジーネキングだが、本番では管理する斎藤誠師の長男・新が手綱を取る(横山和はエコロアルバ騎乗)。父子コンビでは初めてとなる重賞制覇に挑む心境を同師に聞くと「菊沢、武藤父子に先に獲られてしまいましたからね。頑張ります!」と笑った。
今年に入って3月7日の中山牝馬Sを武藤厩舎のエセルフリーダで武藤雅が、4月19日の福島牝馬Sを菊沢厩舎のコガネノソラで菊沢一樹が優勝と、立て続けに父子重賞初Vを達成。「ウチも2着は結構あるんですよ。生みの苦しみという感じですかね」。その言葉通り、斎藤誠師&新もワールドタキオンの23年エルムS、アサカラキングの24&25年阪急杯、そしてジーネキングの札幌2歳Sと、銀メダルは4回を数える。
ライバルの父子に先を越されてしまった形だが、初勝利をNHKマイルCというG1の舞台で実現できればインパクトの大きさで逆転できる。「確かに。そうなれば最高ですね」と同師。ジーネキングは素材的にも状態的にも、その期待を十分に懸けられる器だ。
【日高の夢】ジーネキングは24年北海道セレクションセールで、7920万円(税込み)という高額で落札されたコントレイル産駒。斎藤誠師と親交が深い育成牧場のエクワインレーシング、同牧場の代表である瀬瀬賢氏が師に紹介した山口雄司オーナー、そして斎藤誠師の3人で選んだ期待の一頭だ。
「オーナーも北海道の登別の方。チームを組んで、最初は高い馬は買わなかった。あの年は“クラシックを意識できる馬を”との思いで、評価が高いコントレイル産駒で勝負した」と斎藤誠師。札幌2歳S2着の後は芝の中距離で結果が出なかったため、クラシック路線からマイル路線に回ることにはなったが、頂点のG1まで駒を進められたのは成功と言えるだろう。
「瀬瀬代表のXを見ていたら“日高の夢を背負っていかないと”とつぶやいていた。去年のドラマ(日高生産馬の活躍をテーマにした日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」)もありましたし、時流に乗っていきたいという気持ちはあります」と師は力を込める。同馬を生産した酒井牧場の所在地も日高地方の浦河。熱い思いが詰まったジーネキングは、その期待に応えるべく着々と実力を蓄えてきた。
【厩舎の流儀】競走レベルが上がった近年は疲れを考慮して出走レースを絞る傾向が強い。だが、斎藤誠厩舎は「使い込んで良くなる馬がウチは多い」と、実戦経験を積みながら育てるのがスタイルだ。ジーネキングも今回が9戦目とキャリア豊富。成長を促しつつ、レースでの走りから適性を見極めてきた。
大きな転機は前走のニュージーランドT。初のマイル戦、それまでの先行策から一転して中団から差す競馬で3着に好走した。「(鞍上の横山)和生が本当にうまく導いてくれた。馬体も走りもマイル向きになってきたし、前走のように馬の後ろをついていく競馬ができるなら、東京のように広いコースの方が合う」
さらに状態面も急上昇。4月30日の1週前追いは美浦Wコースでラスト1F10秒8と圧巻の伸びを披露した。「一番条件が合うところに一番良い状態で出られる。人気は16番目くらいでも一発を狙っています。このレースは穴馬も好走しますよね?」。過去10年で9番人気が3勝、2桁人気馬が6頭も3着以内とG1の中でも特に波乱度が高いNHKマイルC。今年は日高の夢を背負い、父子重賞初Vを狙うこの馬が高配当の使者となる最有力候補だ。
◇斎藤 誠(さいとう・まこと)1971年(昭46)4月7日生まれ、千葉県出身の55歳。93年7月にトレセン入り。前田禎厩舎で調教厩務員となり、97年6月から調教助手。05年10月から相沢郁厩舎、06年1月から清水英克厩舎に所属。同年3月に調教師免許を取得、6月に開業。07年京成杯(サンツェッペリン)でJRA重賞初制覇。JRA通算6594戦566勝(重賞11勝)。
≪栗東から駆けつけ斎藤新“太鼓判” 豪快1週前追い≫4月30日に行われた1週前追い切りには斎藤新が栗東から駆けつけた。Wコースでソードマスター(4歳1勝クラス)を5馬身追走し、直線は内へ。最後はいっぱいに追われて豪快に2馬身先着した。時計は6F82秒0~1F10秒8。斎藤新は「具合に関しては何も文句がないくらいの出来」と仕上がりの良さに太鼓判。「相手は強いけど、十分に勝負できるポテンシャルを持っている」と、力強く好勝負を誓っていた。
【取材後記】自分にとって久しぶりの海外出張だった15年暮れの香港国際競走に、斎藤誠師はヌーヴォレコルト(香港C2着)を遠征させていた。当時も今も取材への対応は非常に丁寧で、コメント力も秀逸。慣れない海外での取材とあって、本当にありがたい存在だった。
その香港シャティン競馬場でのワンシーン。調教終了後の朝食会場で斎藤誠師が「来年から競馬学校に入る息子です」と紹介してくれたのが、新君だった。目を輝かせながら「よろしくお願いします!」と、礼儀正しくあいさつをしてくれた姿を鮮明に覚えている。
最近の息子の騎乗ぶりについて質問すると「しっかり乗れるようになって、前のようにハラハラする思いは薄れてきた。今年も最初から流れをつかんでいる感じ」と成長を評価しつつも「もう少しガッツを持って乗ってほしい。まだ奇麗に乗り過ぎるところもある」と辛口のエールを送る。
現在は日本調教師会の関東本部長という重責も担っている55歳。「もう調教師として中堅ですからね。いやベテラン?そうかもしれませんね(笑い)。若い人に負けないように、攻めていかないと」。同年代の自分も、その積極的な姿勢をぜひ見習いたい。 (鳥谷越 明)

