【根本康広 我が道3】騎手って何をするんだろう…面接で「興味ない」なぜか合格

2026年10月3日 07:00

長期騎手講習生時代(2列目右から2人目が私)

 中学3年の秋になれば、クラスメートたちは高校受験のために勉強に集中します。自分は長期騎手課程を受けることになり、受験勉強をする必要がなくなりました。すると担任の先生が「みんなの勉強の邪魔になるから、根本は校庭で時間をつぶしていろ」と教室を追い出されるんです。ここではとても言えないような悪いことをしていた同級生も受験をしないので外に出される。校庭を意味なくトボトボ歩いたり、一緒にボケーッと時間をつぶしていました。何せ競馬に興味があるわけじゃないので、騎手課程の試験に受かってもどういう未来が待っているのか想像がつかない。当時は漠然とした不安を感じていました。

 そんなある日、教頭先生に呼び出されました。「失礼します」と恐る恐る部屋に入ると、黒縁メガネでオールバックの教頭先生が待っています。「何かまずいことをしたかな」と思ったけど、心当たりがないんです。すると「君は騎手になるのかい?馬に乗った経験があるのか?」と聞かれ「ありません!何も分かりません!」と答えました。見るからに真面目そうな先生は「実は僕は競馬が好きなんだよ。応援しているから頑張るんだよ」と言ってくれました。ただ、そこでもピンときていなかったです。騎手って何をするんだろう。犬や猫は好きでしたけど、馬ってどういう動物なんだろう?きっと大きいんだろうなといった感じです。

 試験の日が来ました。まずは体力測定、そして面接です。自分はあくまで、ご褒美のギア付きの自転車を目当てに受けに来ているだけ。面接官に「君はどうして騎手になりたいのか?」って聞かれても「いや、別になりたくないんですよ。父親が受けろって言うから…」と正直に答えました。すると「じゃあ、試験に落ちたら短期講習(厩務員や助手として働きながら騎手免許を目指すコース)で厩舎を探すのか?」と聞かれても「短期講習って何ですか?」といった調子。「じゃあ、全然興味ないのか」とあきれ気味に聞かれ「はい、ないんです。もういいですよね」と言って自分から部屋を出ました。迎えに来た親父が「どうだった?ちゃんと答えられたか?」と聞いてきても「いいから早く自転車を買いに行こう!」とごまかしました。

 あんな受け答えをしたし、絶対に落ちたと思いました。それが、なぜか合格するんですよ。今となっては騎手は人気の職業。入学前から乗馬で訓練する子も多い現在の競馬学校とは全く事情が違ったんでしょう。自分の気持ちとは裏腹にトントン拍子に話が進んでいく。そして春に迎えた騎手養成所の入所式。ここでいきなり挫折を味わうことになります。

 ◇根本 康広(ねもと・やすひろ)1956年(昭31)1月31日生まれ、東京都出身の70歳。77年3月に騎手デビュー。87年日本ダービー(メリーナイス)などG13勝を含め重賞14勝。障害戦でも活躍し、79年にはバローネターフで中山大障害を春秋連覇。JRA通算2633戦235勝。97年に騎手を引退し調教師に転身。98年に開業し通算6420戦218勝。藤田菜七子元騎手ら5人の弟子を育てる。

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