【菊花賞】ロブチェン 3冠へ 父子鷹と呼びたくなる丸みを帯びた中長距離体形

2026年10月20日 05:30

ロブチェン

 「吾輩(わがはい)は3冠馬である」。鈴木康弘元調教師(82)がG1有力候補の馬体ベスト5をセレクトする「達眼」。牡馬クラシック最終戦「第87回菊花賞」(25日、京都)ではロブチェン、ダノンヒストリー、バステール、シートゥサミット、アウダーシアをピックアップした。中でも達眼が捉えたのはロブチェンの丸みを帯びた中長距離体形。19年菊花賞を制した父ワールドプレミア譲りの馬体で3冠制覇だ。

 馬券で中(あて)るのは、人の心を中るより六(む)ずかしい…。小説「三四郎」の登場人物にこんなせりふを言わせた文豪・夏目漱石は形状についての名言も残しています。「丸いものはごろごろどこへでも苦なしに行けるが、四角なものはころがるに骨が折れる」(吾輩は猫である)。猫はともあれ、馬の形状にもそのまま置き換えられる名言です。丸みを帯びた馬体は距離が延びても苦もなく行けるが、四角張った馬体は長距離をこなすのに骨が折れる。

 ロブチェンは前者、典型的な丸形です。首から背、腰、尻にかけてのトップラインが丸みを帯びた滑らかな流線形になっている。丸く映るのは疲れがたまりづらい柔軟でしなやかな筋肉を備えているからです。ゆとりのある骨格のつくりも丸みを与えてくれます。各部位のつながりに余裕があり、滑らかにリンクしている。特に背中。余裕がないと疲れがたまりやすく距離延長に対応できませんが、ロブチェンのゆったりとした背中なら苦もなく長距離に対応できるでしょう。菊花賞、天皇賞・春を制した父ワールドプレミアも各部位のつながりに遊びがある中長距離体形でした。中長距離界の父子鷹と呼びたくなる丸い体形です。

 キ甲(首と背中の間のふくらみ)を見る限り、父よりも明らかに成長が早い。父は古馬になってからキ甲が抜けてきましたが息子は3歳春の時点で徐々に抜けてきた。今回はさらに発達しています。3歳夏を越えての成長と言うべきでしょう。競走馬としてほぼ完成してきました。

 顔つきも大人になった。穏やかな中に集中力があります。左前方のかなたを静かに見つめる目には輝きがあります。強からず弱からずの大人のハミ受け。立ち姿には力みがなく、それでいて力強い。大人の風格を漂わせています。この雰囲気なら長距離戦のスローペースにも折り合えるでしょう。

 仕上がりにも非の打ちどころがありません。毛ヅヤは抜群。黒鹿毛の被毛が黒光りしています。上腕、前腕、スネの筋肉には薄い皮膚を通して血管が浮き出て見えます。鍛え抜かれた証です。

 馬券で中るのは、人の心を中るより六ずかしい…との夏目漱石の記述に異を唱える気はありませんが、菊花賞はさほど難しくない。丸いもの(丸みを帯びた馬体)は長距離も苦なしに行ける。「吾輩は3冠馬である」と訴えかけてくるような体つきです。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の82歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

 ○…ロブチェンは全休日の月曜朝、馬房で穏やかに過ごした。馬体の写真をチェックした房野助手は「お尻がクイッて上がっている。背骨のラインが上がっている証。いいね」と解説。日曜には坂路で4F57秒5~1F12秒7をマークしており「初めて、この馬で凄くいい走りをしていると思った。背中から伝わるものがあった。それくらい順調」と白い歯をのぞかせた。


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